沖縄本島一周。初日。
よければこちらを読んでからこちらの記事をお読みください。
漕ぎ出してリーフ内の浅瀬を超えた。
沖まで出れば誰も干渉してこない自分の時間だ。
ただ、この日のコンディションは最低だった。
強い向かい風に加えて自分自身あまりにカヤックに乗っていない日が続いていたので、
少し漕ぎ始めただけで体力が無いのがわかる。
メーターの40%しか体力が入ってない感じだ。しかも燃費が悪い。
パドルもサイズが大きい物を使っていて体への負担がかなりかかっていた。
気持ちもノってこないので、黙々とパドリングをするだけでなんだかとても辛い時間になってしまった。
沖縄本島一周の出だしからこんなで大丈夫なんだろうか…
ここで今回の旅の予定をザックリ説明しようと思う。
※引用元 旅を面白くする観光地図|今八 URL:https://imahachi.com
北名城ビーチを出て僕は東海岸を目指していた。
地図で見ると左下の糸満から出発して更に下の方の南部に向かって進んでいる。
今回の旅は東側(地図だと右側)から回って最北端の辺戸岬を回って西側(地図の左側)を通って糸満に帰ってくる予定だ。
こうやって見るとまだ本当に始まったばかりなのが分かる。
気持ちがどうのこうの言うには早すぎる。
しばらく漕いでいると遠くの方からカヤックに乗った人が近づいて来た。
相手の格好からして釣人なのは一目でわかった。
距離が近づいてくると釣竿が脇にさしてあってカヤックフィッシングを楽しみにきているのが伝わってくる。
相手も自分も1人。知り合いでも無いのにお互い吸い寄せられる様に軽く挨拶を交わしながら
2、3言話してまた別れた。
海の上で人と会うのは少し不思議な感じだ。エンジン船には何も思わないけどカヤックやカヌー、サップなどの人力の物になると妙な親近感が湧く。
なぜだろう。海の上には人がいないからであろうか。
暮らし慣れている陸を離れて海に出ている事のどこかに不安な気持ちがあってだから海の上だと妙な安心感を親近感だと錯覚しているのだろうか。
それとも普段、街の中では色々な思いを持った人々が交差していてそんな人達の事は見慣れているから興味も持たずにすれ違っていく。逆を言えば1人で海に出る状況で見知らぬ目の前の相手も1人で海に出ていると、目の前の同じ環境や状況に何か興味や面白さを感じてる事はお互いにわかる。そこに何か自分と近しいものを感じるからだろうか。
街の人から見たら特別な1日でもそこで巡り合わせた非日常を体感してる2人が共有した時間は
2人の中では日常となっていたのであろう。
気がつけば釣り人も見えなくなっていた。
午前9時頃から漕ぎ出して、人気の少ないビーチを見つけたら陸に上がろうとしていた。
1日漕いでみても、そんなに距離は進めなかった。
向かい風なのもあるけど、やっぱり体がついてこない。
海図と照らし合わせながら上陸するビーチを探すが、どこも道路沿いのビーチで人がいるのがわかった。
野外に出たのに人の出入りが多いビーチに上陸して一晩過ごすのも嫌なので、次のビーチに
しようと移動しては微妙なのでまた次のビーチ、また次のビーチと移動していた。
こうやって海からビーチを見るとどこも人が多いのがよくわかる。
特に人通りの多い所を進んでいるので仕方ない事だが、人を避けて自分だけの時間を過ごしたいのであまり人目に晒されたくなかった。
結局人気のないビーチは見つからないまま陽が傾いてきてしまった。
それでもビーチを探していたら一箇所だいぶマシな所を見つけた。
大きなビーチで浜の片端は人で賑わっているが、反対の端までは人が来て無さそうな様であった。
これならいいと思い僕は今夜泊まる浜を決めた。
時間的には干潮から上げ潮になっている時間でまだリーフは浅くカヤックで乗り上げることは出来なかった。
しばらくは海の上で水位が上がるのを待つしか出来ない。
ボーとしながら海から浜を眺めていた。
人が沢山いる所は賑やかで楽しそうだ。
少しの間遠くの人たちを眺めていたらそれに少し惹かれている自分もいた。
そんな気持ちに気がついて、自分の中の邪念を振り払った。
「現状に満足してそうなお前らなんかと一緒になってたまるか。」
俺はこの島にケリをつけるんだ。ここで燻ってるのはもう終わりにするんだ。
何か敵対心の様な反発する気持ちに再び熱を入れる。
自分の旅の中に誰も入れたくない。と拒む事で気持ちの弱い部分を濁していた。
今は僕の中の節目の時間で大事なんだと。いう事だけが分かっていて、でもこの時間が結果何になるのかは見えていなくてダラっとした不安に時折気持ちが曇る。
中途半端な苛立ちの様な気持ちを今回の旅の原動力にしていた事にやっと自分で気がついた。
俺は今1人だから煮え切らない気持ちを煮えたぎらせてもいいんだ。と思えたら気持ちがかなり固まった気がして元気と活力が出た。
海の上で30分ほどがすぎた。
西日が熱く、早く日陰に入りたかった。
流石に我慢ができないので、リーフの深そうな所からカヤックで浅瀬に入ってみた。
カヤックだけにすれば浅瀬も進めそうだなと気がついてカヤックを降りて引っ張りながら進んで浜についた。
あとはここで飯を食って眠るだけだと思うと急に1日の疲れが出てきた。
だるい体でテントを立てて飯の準備をして2リットルパックの日本酒をチビチビ飲みながら
一気に晩飯を食べた。
周りには誰もいない。静かだ。
砂浜に寝っ転がると星は街の光で少ないけど確かに見える。
1日の出来事を振り返りながら旅の初日を締め括ろうとしていた。
眠る前に天気もいいのでフライシートもいらなそうだ。フルメッシュテントを蚊帳代わりに使った。
外から中が丸見えだけど気にする必要はない。これも1人の特権だ。誰にも邪魔されない。
さっきまでのゴニョゴニョとした気持ちと変わって気持ちが落ちついて清々しかった。