田舎の島での暮らし。(買い物編)

 

こんにちは。

南国ガイドです。

島に住んで早6年。田舎の離島で暮していると(欲しいものはどうやって手に入れているの?)とお客さんからよく聞かれます。

今回はコンビニもない島でどうやって必要な物を揃えているかを紹介します。

 

  • 島にある物
  • 島以外で買い物する時
  • ネットを使おう
  • いらない物をもらう
  • 浜で調達

 

①島にあるもの

僕の住んでいる島は、スーパーが4つと商店がいくつかあります。

意外とお店があるので便利そうですが、21時には全て閉まってしまうので逃すとキツイです。

気がついたら21時過ぎて家に食べ物が何も無く、飢えながら眠る事もたまにあります。

島に住んでから24時間営業のコンビニのありがたみを知りました。

お昼ご飯を買う時もお弁当や惣菜は12時過ぎるとほとんど売り切れてしまうので、要注意です。

飯を作るために食材を見ていると全体的に(生もの)は値段が高めで、その中でも特に野菜が高いです。

どのくらい高いかと言うともやしが100円を超えます。キャベツは500円近くしている時もしばしば。前に台風で船が止まっていたときは値段が高騰してキャベツは800円を超えてました。

特に夏場は野菜の値段が上がるので、僕のよく食べる野菜といえばトマト缶です。

なので、みんなで居酒屋に行くと揚げ物並みにサラダの人気度が高いです。ここぞとばかりに肉体労働をしている若い男たちが野菜を貪っている光景が見れます。

後は生活用品も品揃えが多くは無いので必要なものは近くの大きな島に行って買うのが一番です。

 

②島以外で買い物をする時

住んでいる島の隣は都会なので、マックスバリューなどの大型店で安く食材を買ってきて冷凍などしてストックしてる方が多いです。

家族だとそれなりに食材の消費量があるので行きますが、僕の様な1人暮らしだとなかなかストックしても使いきれないのと、食材を買いに隣の島に行ったりする方がお金かかるので何か他の予定のついでで買い出したりします。

隣の島まではフェリーに乗って行きます。島では移動手段が無いと不便なので僕はレンタカーをして移動してます。

買った商品は船積みをしてくれるお店が多くあり、レジで船積みを伝えると指定した時間と行先のフェリーの甲板に載せてくれます。

ただ、サービスでやってくれているので何かあっても保証しませんよ。となっています。

船積みはしっかりやってくれるのですが、海が時化ているときは甲板に波が被るので荷物が流されている事もしばしば。前に大根が波にさらわれて行くのを見た事があります。

後は、大きな荷物(車や資材etc…)は貨物船にお願いします。

 

③ネットを使おう

最近はネット通販が主流なので僕も基本ネットで買っています。

安定はamazon楽天ですね。

amazonはここでも2000円以上で送料無料です。プライムも適用されます。

後はメルカリです。沖縄の離島は送料が馬鹿にならないので、送料無料で売っている事の多いメルカリが個人間の販売ではよく使います。

 

後は仕事で使うアウトドアギアが必要な場合はTradeinnと言う会社でよく買う事が多いです。

スペインの会社なのですが、〇〇INN と言うサイトが沢山あってアウトドアやスポーツ製品がとにかく安いです。しかも海外から発送なのに結構届くのが早いです。

 

リンク貼っておきます↓

www.tradeinn.com

 

後は国内のアウトドアギア中古販売専門店のUZDを使う事もあります。

以前に廃盤になったギアを探していたら中古でしたが綺麗な物を買えたのでそれ以来お世話になっています。

こちらもリンク貼っておきますね↓

uzd.jp

 

ネットでの販売はめちゃ助かるのですが、台風などの影響で配達が遅れると国内で注文した物でも1ヶ月くらい待つ事もありました。

なので必要なものは早めに頼んで、後は気長に待っています。

 

 ④人からもらう

後は人のお古をもらうのも1つです。

僕は以前、冷蔵庫と洗濯機をもらった事があります。

今までタライに洗濯物を入れて踏んでいたので、生活がかなり文明的になりました。

冷蔵庫も家族用のが貰えたのでスペースを有意義に使えています。

 

後はネット掲示板で地元コミュニティがあったりもするのでそれも使えます。

SNSのページでも使ってない物あげますと言うページもあるのでそれにもお世話になっています。

 

 ⑤浜で調達

最後は浜で調達出来る物ですね。

シーグラスや貝殻、流木はもちろんのこと実用的なもので言うと

ビ漂流ゴミの中でウレタンをよく見ます。

これはクッション材なので車のキャリアにつけたり、ギアの保護に使ったりもしています。

後はブイですね。魚突きで使えるので拾った事もあります。

ロープもかなり落ちているので使えるのは持って帰っています。

 

後はたまに珍しい漂流物が手に入るのでそれが楽しみですね。

僕が今までに拾ったり聞いた事があるものだと

 

・パドル(カヤックの道具)

5万円くらいするブランド物のパドルを拾っている人もいるので見つけたら僕的にラッキーですね!

・ゴープロ

これはめちゃ嬉しいですね!僕も1度拾った事があります。

 

・ビン玉

あまりピンと来ないかもしれませんが、昔のブイです。

今ではプラスチック系の物が大半ですが、昔作られていたブイはガラスでできていたのでとても綺麗です。あとは希少価値があるので、レア感もあります。

 

・ウミガメの甲羅

これは綺麗な状態のはなかなか見ませんが、カケラはよく見ます。

何度かだけ綺麗状態の甲羅を見ましたが、使い道がわからずそのまま浜に置いてきちゃいました。

今思えばそれでお酒でも飲めばよかったかな。

 

今回はこんな感じです。

それではまた! 

 

あなたは デス・ダイビング をご存知だろうか。

 

はじめまして。

南国ガイドともうします。

南の島でアウトドアガイドを18歳の時から6年ほどしています。

 今回は飛び込みにまつわる話です。

これから夏真っ盛り川でひんやりしながら遊ぶの最高ですよね!

それではどうぞ!

 

  • ①デスダイビングを知った理由
  • ②本題のデスダイビング
  • ③デスダイビングのルール
  • ④デスダイビングのまとめ

 

 

①デス・ダイビングを知った理由

 

これから真夏はツアーで行く場所が山だと暑くて大変なので水場に行くことが多いです。

特にシュノーケルやキャニオニングをする機会が多くなります。

キャニオニング?なにそれって方が大半だと思います。

ざっくり説明すると身一つで川に飛び込んだり下ったりするアクティビティーです。

ツアー中の写真です↓

 

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こんな感じ。

 

この位の高さはまだまだ序の口といった感じです。

シーズン初めに高い所(6〜7m)から落ちて飛び込みの感覚を体に思い出させるのですが、これが久しぶりだと結構怖いです。

友達と度胸試しで行くと途中で引くに引けないので、体の力を抜いて膝から崩れるように落ちます。

内心1㎝でも水面に近くなってから足を地面から離したいです。

 そんなにビビってたのですが、シーズン終わりには飛び込みのしすぎで麻痺して全然飛べるようになります。

 

② 本題のデス・ダイビング

今回のブログはそんなキャニオニングの時期が来るぞと思ってYouTubeで何か飛び込みの技がないか見ていた時にある物を見つけたのです。

それこそが ’’DEATH DIVING’’

 10メートル位ある飛び込み台から人が落ちるんですが、ルールがまるでわからん。

ちなみに飛んでる途中の写真を見てください↓

 

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これでわかる人いる?

ちなみにこれがワールドチャンピオンシップと書いてあったので、世界大会ですよ。

世界大会で更に10m以上から飛んでるのにリアクション薄過ぎませんか?

フォームも意味わからなければ入水で水しぶきも立っていて審査員が真面目にジャッジしているのも意味わからないし。意外と多い周りのオーディエンスが送る歓声に謎しか湧かない。

ここまで謎だとみんなも何もわかってないんじゃない気がしてきた。

見てる人も飛ぶ人もわかってないんじゃないかな。審査員も適当に得点の札あげてるでしょ。

 

動画の関連に大会の切り抜きが出てたので一応チャンピオンらしき人の動画も見てみると…

 

 

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おお!なんかフォーム綺麗。

入水は案の定、水しぶきあげてました。

これは!ポージングの大会なのか?にしてはポーズ選び微妙じゃないか?

チャンピオンが飛んだのを見て子供達この表情。

 

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もう、絶叫してる。大興奮じゃん少年たちよ。

 意味がわからないとマジで意味がわからない。

お兄さん1人で置いてけぼりだよ。

 

③デスダイビングのルール

ざっくりとでもいいのでルールを知りたくて、Wikipedia先生に教えてもらいました。

デスダイビングはノルウェー発祥のスポーツで地元でDøds 呼ばれている飛び込み競技です。

競技には二種類あってクラシック、フリースタイルがあるそうです。

ルールはクラシックだと飛んでから手と足を広げて水面ギリギリで体を丸くしたポーズで

入水することが一連の流れだそうです。

フリースタイルは空中のポーズが自由で、後はクラシックと同じみたいです。どちらも

空中でポーズを維持した長さが得点になるそうです。

 

④デスダイビングまとめ?

なるほど、なるほど。

ルールはわかったけど、改めて見てもあまり面白みが変わったりとかは無かったです。

初見で十分楽しめます。

一応URL貼っておくのでみなさんも見てください。

 

↓特にクレイジーな人が多く出てます。

https://youtu.be/eTxocrXFjBM

 

   

↓チャンピオンの切り抜きです

https://youtu.be/_xJHL2mfFY0

 

チャンピオンを筆頭に自分の熱を込めて練習してると思うとマニアックな競技だなーと思いますね。

なんども水面に叩きつけられて痛い思いをしながら続けてると思うとかなりクレイジーです。

 

結局、僕はデス・ダイビングを見過ぎて本来覚える予定だった、飛び込みの技は全く覚えられんかった…

あー、えー、終わり!

 

人は落ちてるのに 今回も落ちなし!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アウトドアガイドが教える。沖縄で快適にキャンプをする方法。(テント編)

初めまして。
南国ガイドと申します。
僕は沖縄の中でも南の端にある田舎の島で暮らしながら18歳の時からアウトドアガイドを6年ほどしています。
ガイドをしながら身につけたノウハウを皆さんに伝えたいと思います。




みなさんキャンプは好きですか?僕は大好きで亜熱帯気候のここでは、特に夏場は暑いのでテントを持っていっても使わないで夜を過ごすことが多いです。
アウトドアガイドをしてる僕が今回は、沖縄でキャンプをする時のについて紹介したいと思います。

  1. キャンプの種類 
  2. 暑い場所で活躍するギア紹介。
  3. アウトドアガイドの野外での寝方。
  4. テントをほとんど使わない僕個人の寝方です。


①キャンプの種類

最近は(キャンプ)と単語を良く聞きます。一言に言っても環境や状況によって目的や必要な道具なんかも変わってくるので、なかなか曖昧ですよね。

例えば暖かい所で行うのか寒い所で行うのか。キャンプをするのが目的なのか、キャンプ(野営)も目的地に行くまでに必要な工程になっているのか。 意外と広い言葉です。

僕は車でキャンプをしに行くのも好きです。ただ普段キャンプをするときは2泊3日や3泊4日で人のいない所に徒歩やシーカヤックで目的地まで移動しながら夜はキャンプをしているので基本的には実用性や軽量、コンパクトなんかを条件に見ていたりします。

特に今回は沖縄など暑い所でテント泊をする際に使える道具やノウハウを紹介していこうと思います。

この記事はお洒落キャンパーの人の様に見栄えは良くないです。ただ少しワイルドなキャンプをしたい人はぜひ見て行ってください!

②暑い場所で活躍するギア紹介。

突然ですが、みなさん亜熱帯の気候の所でテント泊をする際に何が問題になると思いますか?

そうです!暑さですよね。
キャンプ中に蒸し暑くて寝れないなんて最悪です。

なので最初は風通しが良くて熱がこもりづらいフルメッシュのテントを紹介します。

THE NORT FACE\Eco Trail シリーズ

www.goldwin.co.jp


まず最初はこのエコトレイルシリーズ。僕も初めて買ったテントはTHE NORT FACEでした。
1人用だと寝た時の空きスペースが無いので、濡れたら困る物を入れる為に少し大きい2人用を使っていました。

全室もしっかりついているので、そこにも荷物をおくことも可能でかなり充実してます。

いざとなれば可愛いあの子を誘ってキャンプデートにも使えますね♡



Naturehike \ Cycling 2 Ultralight Tent 20D

Cycling 2 Ultralight Tent 20D
(サイクリング 2 ウルトラライトテント 20D)
naturehike-japan.com


次はネイチャーハイクのテントになります。
ネイチャーハイクは最近話題のクオリティーの割に価格が非常に安いテントとなっています。
重量も1.85kgと軽く持ち運びもしやすいです
テントは欲しいけど高くて中々手が出ない方。夏用のサブテントで考えている方にはオススメです。

ただ熱帯夜はフルメッシュのテントでも暑いです。
なので、もう少し快適な寝方をご紹介します。



③アウトドアガイドの野外での寝方




tent-Mark DESIGNS\モノポールインナーテントフルメッシュ

www.tent-mark.com




こちらは国内老舗のテントマークが作っているインナーテントです。最近僕も買いました。

インナーテントと聞いてピンときた方もいるかもしれませんが、フライシートがついてません。

暑いとフライシートを貼るのも嫌になっちゃうんですよね。せっかくのフルメッシュテントの通気性も落ちてしまうので。

そんな時はタープを張ってその下にテントを張れば通気性もバッチリで雨の心配もありません。
言葉だとイメージがつきずらいですが、こんな感じになります↓

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写真のタープはヒルバーグ社の10xpタープになります。3.5×2.9のサイズになります。
奥ではハンモックで寝ている人もいて、詰めれば三人で寝れました。ゆったり使いたい方には2人がちょうど良さそうです。


こちらは僕が普段使っているタープになります↓


DD Hammocks\ DD Tarp 3.5 x 3.5

www.ddhammocks.jp


DDタープは最近有名になってきているDDハンモック社が出しているタープシリーズになります。

値段が安く正方形のタープを探している方にはお勧めできます。

僕は3.5×3.5のサイズを普段使っています。
広げるとこんな感じになります。

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写真だと分かりづらいですが、中に入れば日陰で涼しく過ごせます。

この写真を撮った日は3人でタープの下でお昼ご飯を食べていたので、日中日除けで使う分には十分過ごせました。
まだスペースもあったので、4人なら十分に入ると思います。
寝る時もタープの下にインナーテントを張って2人は寝れます。1人で使えば横から雨が吹き込んできても濡れずに済むスペースがあります。



HIILBERG\TARP10 UL


www.hilleberg.jp


後はキャンプツアーをやっているショップではヒルバーグ社のタープを使っている方をよく見かけます。
ガイドさん達も多くの人が使っていて評価もいいので信頼があるタープです。

値段は張りますが、丈夫でDDタープと比べても収納時の軽さは歴然でした。

上の写真で見ていただいた様にタープの下にインナーテントを設置するのは沖縄などの気温の高い所ではかなり役にたちます。

本州でも夏場なんかは非常に使えると思うので興味のある方はぜひ試して見てくださいね。

では最後に。

④テントをほとんど使わない僕個人の寝方です。


テントをほとんど使わない?どうゆうこと?って方は多いとおもいます。

ざっくり説明すると、「こんなでも寝れたよ。」という前に僕がやった事のある野外での寝方3つになります。

①蚊帳

蚊帳とインナーテントってあまり違いがない様に思われると思うのですが、結構違います。
1つ目の違いは入り口がない。

これに関してはファスナー付きの入り口がないので、上から吊るしている蚊帳をくぐって出てこないといけないので、少し出るのがめんどくさいです。まあ大した違いではないです。

2つ目の違いは、床がない。

これはインナーテントとはかなり違いがあります。
床がないので、下は地べたです。蚊帳を貼っているので虫はきませんが、地面に直接キャンプマットを引いて寝る事になります。
夜中に砂に潜っていた虫やカニが出てくる事もしばしばあります。それが気にならなければ結構寝れます。
何回か使っていたら僕は慣れました。マットに砂が付くと寝る所も少しジャリジャリとしていたりするので、あまり繊細な方にはお勧めできません。

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張るとこんな感じなっています。


これ+タープや天気のいい日はこれだけで寝てました。


僕の持っているのと同じのは見つからなかったのですが、同じ様な商品はありました。


Amazon | The Friendly Swede 蚊よけ網 モスキートネット アウトドア 蚊よけ 固定用ペグ4本付き グリーン | The Friendly Swede(ザ フレンドリー スウィード) | 防虫・殺虫用品


②マットのみ

これは前から僕は天気のいい日は焚き火をしながらそのまま寝てしまう事が多いので未だにやっています。特にカヤックでキャンプをしていると砂浜で止まる事が多いので、砂が冷たくて気持良くて気がついたら寝ている事が多いです。夜中に一度目が覚めた時にキャンプマットだけ敷いて朝まで二度寝します。

蚊帳の時に話した通り寝ていると生き物に起こされる事が多いです。
特にカニは好奇心旺盛でTシャツやキャンプマットをハサミでつまんで食べようとします。
そこまでなら良いのですが、そのうち指や足も挟むので最初はびっくりして起きますが、最近ではパッパと払ってあしらっています。
厚みがあるエアーマットだとカニが登って来づらいです。

写真があればよかったのですが、写真がなかったので砂浜にただマットを敷いてるのを想像してもらえれば合ってます。


マットは前までコンパクトになるエアーマットを使っていたのですが、最近は何度か穴が開いたりした事もあるので、安いキャプテンスタッグシリーズのキャンプマットを使っています。




③ブルーシート


え?と思う方は多いかもしれませんが、キャンプ始めたばかりの頃はテントやタープを持っていなかったので、ブルーシートにくるまって寝ていました。
気温が高い沖縄だからできる技かもしれませんが、夜も特に寒くなければ意外と快適です。

初めて1人でカヤックキャンプを2泊3日でした時も2泊3日で海岸線を歩いた時も特にテントを持っていなかったので、ブルーシートでした。
カニや虫も入って来づらく雨が降っても濡れないので、なかなかブルーシートはシンプルで使い勝手がよかったです。

これも写真がなかったのですが、ブルーシートがある方は今度くるまってみて下さい。それです。


いかがでしたでしょうか?

後半はあまり実用的ではなかったかもしれませんが、暑い気候の時に使えるギアやガイドのキャンプの寝方でした。
皆さんも自分なりのキャンプを楽しんで下さいね。自己流キャンプスタイルがあればぜひ教えてください!
それではまた!

アウトドアガイドの夏休み2

 

 

前回に引き続き沖縄は緊急事態で僕の住む島のガイドの人たちは仕事が無い日が続いている。

そんな時にベテランガイドの先輩が島に住む若手ガイドの育成と交流を含めた1週間のワークショップを開催するとの事でそこに招待していただいた。

流石に1週間は休みが取れない人が多いので、前半2泊3日と後半3泊4日に分けての開催になり、僕は1週間休みが取れたので、前半と後半どちらも参加した。

他の参加者は前半だけ来る人が多く後半は半分も人数がいなかった。プランとしては前半は島の東側、後半は西側を周る。

今回は特に荒れたところなども無く平和であった。ただ、屋外で数日過ごしていると食料や水に限りがあるので考えて使わないといけないという普段はない制限がある。空が白み始めると自然と目が覚めたり、電波が無ければネットはもちろん天気予報も頼れないので自分で気づくための繊細さが出てくる。気づくのが遅れれば水もない無人島に取り残されて食料も無くなれば終わりだ。まして海の上なら死んでもおかしくない。

ガイドとして仕事をしている僕も長期で休みを取ってカヤックで移動しながらキャンプで過ごすというのは非日常だ。

なので今回は前半の記録にしようと思う。

 

 

出発当日の朝に友人の車に相乗りさせてもらいカヤックと2泊3日分の食料と道具一式を積み込むと僕らは集合場所の港に向かった。

今回のワークショップとしての目的はカヤックでのガイディングがテーマになっていた。中でも島から島へ移動するアイランドホッピングと言われる場面を中心にAさんに手ほどきをしてもらう機会であった。

集合場所に着くともうほとんど前半のメンバーが揃っていて、各々カヤックにキャンプ道具を詰め込んでいる。

僕らもカヤックを降ろして荷物を詰め始めた頃、今回の集まりの主催者 Aさんが到着した。

軽く挨拶をして、みんな準備を済ませた後、Aさんを中心にミーティングを行った。荷物の準備の時点で荷物の積み方やいざという場面で使う道具のセットの仕方をアドバイスを受けて最終チェックをしてから僕らは出発した。

初日はカヤックで近くの島まで渡り、人数も9人と多いのでお昼くらいには上陸してゆっくり過ごす予定だ。みんなどのくらい出来るかは分からないので、グループとしての確認を含めた動きであった。

9時ごろには港を出発して目的地の島を目指して漕ぎ始めた。

 

天気的には北東風が吹いていたが、特別強いわけでもなく最初は問題も無く周りの人と話しながら漕いでいた。1時間半ほど進み時刻は10時半頃で気温が上がって風が強くなってくる時間帯であり、予定通り風速も6~7m位と強くなってきていた。

僕らは自分たちの住む島の南東側からそのまま直線にある島を目指して漕いでいた。北東から風を受けるとちょうどカヤックの左側からバシャバシャと風波がかる。

フェリーグライドと言われる航海技術で風や潮の流れを予想して目的地に直線では無く最初から流されることを想定して少しずらしたポイントを狙って渡る方法があり僕らも左からくる風に対して目的地から左側にずらした場所を狙って進んでいた。

途中、両方の島から伸びるリーフとリーフの間の深いポイントに何日か吹き続けた南風の影響でその日は1.5~2m位のウネリが集中して入っていた。南側から来るウネリは僕らの右側から分厚い波がカヤックを押し上げては波と波の谷に下げる動きを足してくる。ゆっくりなテンポで来るウネリとそれより速いテンポでかかる風波に挟まれた状況で、どちらも特別大きかったり強かったりする訳では無いのだが、やや漕ぎづらかった。

丁度僕はAさんの近くを漕いでいたので「ウネリと風波が逆から吹いていて、これが更に強くなるとどういう状況が起こりやすいですか?」と質問をしてみた。すると「三角波が立ちやすかったりもするが、それは地形にもよるから一概には言えない。それより今を楽しめ!」と返事が帰ってきたので、僕は言われた通り楽しむ事にした。徐々に後ろからも波が来る様なグチャグチャとした状況になった。後ろから来る波に乗って遊びながら進んでいるといつの間にか目的地の島のリーフに入った。

深みは抜けたのでウネリは落ち着いて、風波だけがバシャバシャと立っていたが、目的地の浜までは風下と同じ方向に進むので楽だった。今回の1週間で一番漕ぎづらいのが初日のこの時だけであった。

 

予想通り12時には目的地の浜に上陸した。カヤックを降りて各々自分のテントを張って、Aさんのタープの下でとりあえずビールで乾杯をした。その後ミーティングをして今回のAさんのガイディングや海況などを踏まえて自分1人で漕いでいたら途中のウネリの出たポイントはどうしたかなどを話した。僕は1人でも渡っていたが今回使っていたスカートが古く水が徐々に自分の乗っている中に入っているのがわかっていたのでそこが問題であった。

シーカヤックは基本、乗り込み口の前後に荷物入れのスペースがあり自分の乗っている所とは壁で仕切られているので乗り口に水が入っても沈まない仕組みになっている。更に乗り口にも水が入らない様にスカートと言われる道具で乗り口を覆うことで水が入ってくるのを防ぐのだ僕はそれが疎かだったので、それの重要性を改めて確認した。今日通って来たルートの説明や途中ウネリが立ちやすい場所がなぜあったのかとAさんから説明を受けて、ミーティングも早々に終わり自由時間になった。僕はビールのタブを開けて昼からお酒を楽しんだ。他には浜で寝っ転がって日焼けしてる人や、写真を撮る人、海に浸かってのんびりしている人と各々好きに午後のバカンスを過ごしていた。

お昼を済ませて、3時頃から魚を突きに行こうと話になった。カヤックを出して近くの深場で今夜のご馳走を獲りに向かった。

僕は魚を突く道具は持っていないので、見釣君と言われる泳ぎ釣り道具を持っていた。シュノーケルをして魚を見ながら釣れる30㎝くらいのおもちゃの様な物だ。

カヤックをアンカーで留めてシュノーケルを付けて海に入った。水の中でフィンを履こうと浮力のある見釣君が流されない様にエサ付の針を岩に掛けて、パパッとフィンを履いて視線を戻すと見釣君は無くなっていた。

最初は針が外れたのかと思い流される方向を探したが、目を離したのは10秒も無いのでそんな見えなくなるほど遠くに行くとも思えなかった。沈んだのかもと海底も見ていたが全く見つからない。

結局、僕は2時間ほど見釣君を探しつつシュノーケルをしてみんなと一緒に浜に帰った。

見釣君はどこに行ったのか浜に帰りながら考えていたが餌がついていたので多分魚が食って針に驚いて見釣君をつけて泳いでしまったのだろうと思う。本当に魚には申し訳ないことをした。

 

17時にはみんな浜に帰ってきた。先に戻って焚き火の準備を始めている人のお陰で早くから晩飯の準備が始めれた。魚を取った人は捌いて刺し盛りを作っていた。薪に火をつけて皆それぞれ自分の晩飯を作っている。

初日は保冷バックに入れれば生の食材をを持って来れるので、僕はキンキンのビールを飲みながら持ってきた鳥肉を焼いてみんなのツマミと交換した。魚は煮付けと刺身になっていて、Aさんが持ってきたイノシシ肉も焚き火の上で豪快に表面を焼いて大量にイノシシのタタキも出てきた。

もう食えないよと言うほどの豪華な食べ物に囲まれて幸せだった。一緒にキャンプに行ったことがない人もいたので、そんな人たちとも会話をしながら次第に夜も更けて行った。

普段、一緒にカヤックでツーリングに行ったりキャンプをしたり出来ない人達が一緒にいるのだが結局人数が多いと深く話す事も無くいつもの友達と話していることが多くなってしまう。

結局この日もあまり話さなかった人もいたが、初日だと思ってそんなに気に留めていなかった。今回大人数で初めてカヤック旅をして感じた事は、人数が多いと旅自体はグループとして濃くなるのは難しいと感じた。

どういう事か説明すると、大人数では全体の中にまた2、3人の小さなグループが自然と出来るので一緒に行動していても意外と同じ物を見ていない。カヤックやキャンプの経験差でもまた思う事は変わってくるので、一緒に過ごした気はするけど一緒に行った人でも何を感じたり考えたのかあまりわからない事が多かった。

 

夜も更け誰かが野牛さがしでもしますか!とふざけて言っていたが僕は野牛が島にいる事を初めて知った。

僕らがキャンプをしてる島は牧場があり、柵が壊れたところから牛が出入りしていて島中に野牛がいるそうだ。最初僕は乗り気だったが話を聞くにつれてだんだん行く気がしなくなってきた。なぜなら大きくてとても気性が荒いそうなのだ。更に牛には敵わないイメージがあったからであった。

沖縄本島中部では闘牛大会が盛んで今だに年数回単位で大会が行われている。闘牛というとスペインのイメージだが、沖縄の闘牛は牛VS人ではなく闘争心のある牡牛同士を円形のドームの中で戦わせるのだ。沖縄では大衆娯楽としても馴染みが強く昔はテレビで放送までされていたほど。僕は以前見に行った事があるが、最大だと1トン級のクラスもあり大きな牛同士がぶつかる音は生き物が当たってる音とは思えなかった。岩と岩をぶつけた様な硬い衝撃音が2階建のスタジアムいっぱいに広がるのだ。

サイズも1トン級となると177㎝ある僕より牛の背中の方が高かった。他にも牛が恐ろしいと思った事があった。

 

前にバイトで季節労働の工場で働いてたそんなある日。夜勤明けにスーパーに行こうと原付に乗っていたら、仲の良かった40過ぎのおじさんが額から血を流して右手で左肩を抑えながらびっこを引いて歩いていた。

予想外の姿に心配しておじさんに声を掛けてみると青ざめた様子で何があったか話してくれた。経緯が気になってしまって僕も固唾を飲んでおじさんの一言一言を聞いた。

普段から酔っ払ってることの多いおじさんは、牛のうんこから生えると言われるマジックマッシュルームで酔っ払ってみたいと興味が湧いて、工場の近くにある牧場に友人2人を連れて3人で夜中に忍び込んだ。

牧場を囲む有刺鉄線を抜けておじさん達はライトで一個一個うんこを照らしながら散策していたが、一向にキノコは見つからずに時間だけ過ぎて、気がつけば空も明るくなり始めている。諦めてそろそろ帰ろうとなった頃。3人で冊に向かって歩いていると一頭のデカイ牛がジッとこちらを見ている。気づいていたが気に留めずに歩いていると、突然牛が怒り狂い一番近くにいたおじさんに体当たりをかましてきた。牛の咆哮と軽々と人が宙に軽々と舞う姿を見た友人2人は一目散に柵を越えて逃げ出してしまい。振り向きもせずに走って逃げてしまった。

一方、宙を舞い終えたおじさんは地面に這いつくばりながら柵を目指すが、興奮した牛のツノで何度も突かれ宙に舞っては牛糞まみれの地面を転がりもがいた。まだ薄明るい早朝に40過ぎのおじさんがひたすら牛に投げ飛ばされている。誰もいないのでもちろん助けてもらえず、終いには背中を硬い蹄で踏まれて衝撃でギックリ腰になってしまった。外からも中からも激痛に苦しみながら有刺鉄線に命からがら捕まりザリザリに切り傷を作りながらなんとか柵を超えおじさんは生還した。「なにが牛を刺激をしたのかわからない」と語るおじさんは赤いTシャツを着ていた。

話が逸れたが、そんな思い出があるので気の荒い野牛には絶対に会いたくなかった。

結局、牛を探しにはいかなかったが、眠ろうと砂浜の上にマットを引いてそこで眠ろうとしていたら茂みの奥でバキバキと枝を踏む音がする。大きさ的に絶対牛だとわかってからは牛が近くに居るのが気になってしまって初日はなかなか眠れなかった。

 

朝、目を覚ますと7時少し前。9時には出発なのでそれまでにテントとキャンプ跡を片付けて、朝飯をすませるとちょうどミーティングの時間なった。

2日目もキャンプ予定の島に真っ直ぐ行くと早く着きすぎてしまうので、途中近くを通る島を散策したり、サンゴのかけらで出来た浜で記念撮影をしようとAさんからの流れを聞いた。

海の上にサンゴのかけらで出来た浜が最近現れたらしく、午前中はAさんをリーダーにその浜に向かう。午後からはリーダーを要所要所で変えながら目的地に向かう事になった。

 

天気も穏やかで、僕らは写真を撮る余裕もあり楽しみながら漕いでいた。人の住んで居る島から少し離れるだけでとても海の色が綺麗になる。海の中を覗き込み、青の濃さに興奮しながら僕らは目的のサンゴのかけらで出来た浜に到着した。

サンゴのかけらが押し上げられて沖合に出ているのは沖縄でもかなり珍しい。石垣島近くの幻の浜や西表島にあるバラス島が有名で、どちらも満潮時はほとんど沈んでしまう様だ。島と言うより干潟に近い。

幻の浜は観光客相手にできた名前で本当は浜島。名前の通り浜しかないのでわかりやすい。大きさは随一で西表島近くにあるバラス島は諸説ある様だが、僕が聞いたのは建設用語でコンクリートに混ぜる砂利をバラストと言うそうで昔はそこから取っていたのでバラストと呼ばれていたがトが島と勘違いされいつからかバラス島と呼ばれる様になったそうだ。海流や風の影響で周りのサンゴのかけらが集められて出来ているのでタイミングによって大きさは変わる。

僕らが浜に上がった時間は満潮頃で今現在ではかなり高さがある。9艇はカヤックをあげられたので広さもそれなりにあった。時期によっては小さくなったり大きくなったりと変化する。今回は季節風で南側の風が吹き付ける日が多かったのでその波で押し上げられて海面から現れた様だ。台風が来た後も波に押し上げられて浜が大きくなったりと変化があるので、穏やかな時が続くと周りに広がって高さがなくなり海から出てこなくなってしまう。

 

上陸後、僕らは記念撮影をすませると、この後のリーダーをAさんが決めた。指名されたのはAさんの友人でもあるIさんであった。Iさんは40歳手前の僕の先輩でこの後はIさんを先頭に僕たちはカヤックを漕ぎ始めた。

他の人とカヤックでツーリングする時にリーダーを決める事はかなり重要だ。漕げる人が集まればついつい安心な気持ちになって油断しがちであるが、安心と安全は別である。初めて友人ガイドと漕ぎに行った時はその事に気づかなくて

僕も痛い目をみた。どこか目的地に行くとした場合、海の上で喋りながらやんわりと場所を決めてしまうのは結局誰も判断をしっかりせず危ない状況になってから焦ったりするなんて事もあり得る。

なので出発前にグループの頭を作って進路を取る必要がある。今回は進路の取り方を勉強する集まりなので、色々と周りの人のアドバイスや質問を聞けるいい機会だ。

 

サンゴの浜から出発して向かうは10㎏近く離れた島だ。この日は南東側から風が吹いていて僕らは右側から風を受ける。目的地としているのは島の右端。ある程度の風で流される事が予想される。

Iさんは普段山のガイドをしていて、あまりカヤックに乗っているイメージがなかった。最初から島の右端をめがけて漕いでいたIさんを見て大丈夫かな?と少しコース取りに不安があった。フェザーグライド。風や流れを予想してコースを取らないと流されてしまうからだ。島渡り中の後半にやはり流された分の軌道修正をしているのがわかったので、大袈裟な位流されても大丈夫な様に進路をとって行かないといけないんだな。と僕もIさんを見て勉強になった。

今回9人と大人数で漕いでわかった事は、大体の場面で3グループ別れていた事だ。この時もそうだった。2、3人の先頭集団。次は4、5人位の先頭に少し距離が開いている。最後はまた2、3人の最後尾グループ。なかなか先頭とは距離が開いている。最後尾にいるとこれ以上に遅れられないので頑張って漕ぐのだが先頭もスピードに乗って漕いでいるのでなかなか難しい。なのでリーダーはこの後ろのグループにも気を使ってペースを見てあげないといけないのだが、今回の人数で慣れている人はAさん位でミーティングでは常に反省点にあがっていた。

大体2時間位で僕らは目指していた浜に到着した。

浜に着いてすぐにミーティングが行われた。Aさんの「Iに誰か意見やダメ出しある人」と言う質問に僕ら後輩たちは手を上げづらいので皆黙っていた。

そうしたら、「じゃあ俺が思った事言うよ。」と沈黙を破りAさんはIさんに意見を言い始めた。やはり最初に出ていた進路の取り方が問題に上がっていたが、Aさんの言い方が遠慮がなく思った事をズバズバと言っている。

僕ら後輩たちはどこを見ていいのかわからなかった。おじさんがおじさんを説教している姿は見るに耐えられない。さらに先輩だからなおさらで僕は目が泳ぎまくっていた。一通りAさんの意見が終わるとIさんは自分の進路取りに関して弁明をしていたが、Aさんの「それは言い訳に聞こえるけどな」と言う一言でIさんは八方塞がりになってしまい、その状況に僕の目はシンクロでも始めそうな勢いであった。

今になって思えば、あんなに友達にしっかりと意見をしたAさんは優しいなと思う。友達なら遠慮して言いづらくなってしまいそうだが、遠慮せずましてや商売敵に近いであろう相手に自分の経験をちゃんと教えてあげるAさんの器の大きさに尊敬する。

ミーティング後は昼休憩で食事を食べ、近くの自販機でジュースを飲んだ。また暑い時の冷たい炭酸は最高にうまい!ビールもいいが甘い物の方がこんな時は美味しく感じる。

缶ジュースを1人で2本飲みほしてまた出発前のミーティングをした。この次は僕の友達であるH君がリーダーに決まった。この日の目的地までは彼が先頭をする事に決まった。

後ろから先輩や同世代のプレッシャーを感じて必要以上に色々と考えて不安になってしまう。僕も以前リーダーをやった時に不安で中途半端な動きをしてしまい。Aさんに怒鳴られた。

特に問題もなく目的の浜に上陸した、そこから島で一番高い展望台に登り僕たちは周りの島の位置や海の状況を確認した。

その頃、R君がバックの中を漁りながら「ケータイがない」と言ってテンションが下がってる。思い返せば昼飯を食べた場所で使ったのが最後で この後港近くの浜に上陸して買い出しをする間にR君はレンタカーを借りて昼飯を食った浜に携帯を探しに行くことになった。

そうと決まるとR君は携帯がカヤックの中にないか確認してくると言って駆け足で展望台から降って行った。僕らもぞろぞろと歩きながら、カヤックの元に帰ったがそこで待っていたR君は首を横に振るだけで、ケータイはなかったそうだ。

次の浜までは10分もかからないで到着するところにあるので、そこまで移動してすぐにR君は車を借りに行った。僕も同伴することになり一緒に行ってみたが、レンタカーは3軒あったがどこも閉まっていた。

僕の電話で連絡してみると一件だけ出てもらえてどうしてもとお願いしたら、開けてくれた。レンタカー代を払うと僕らはすぐさま昼飯を食べた浜に向かった。

カヤックで移動中は状況にもよるが何も影響がなければ時速6~7キロほど進んでいる。昼飯を食べた浜から今いる港近くまで来るのに1時間くらいかかった。車だと60キロは出ていて、しかも島の外周を回るカヤックとは違い島内最短の距離で移動できるので10分かからない位で目的の浜についた。人力で移動した後にあっという間に同じ場所に戻ってくると、来た道のりがあっけなさすぎて虚しく感じてしまう。時間も携帯もないからもちろんしょうがないのだけど。

僕とR君は携帯を見落とさない様に浜を歩いた。

僕はR君が飯を食っていた茂み近くを、R君はカヤックを置いていた水辺近くを探して歩いていると、「あった。」と軽々見つけたR君。もうちょっとリアクションがあるかと思っていたけどとりあえず見つかって良かった。

帰りにR君は待たせたみんなに差し入れでビールを買っていた。結局、予定より小1時間遅くなって目的の島を目指した。目指したと言ってもすぐ目の前の小さな島なので、30分程度で到着した。

上陸後は、R君の差し入れの冷えたビールで乾杯をして18時頃に自由時間となったので僕は高台から周りの海の景色を眺めて、魚突きに行くR君と一緒に先に魚突きに行ったメンバーのいるポイントに向かった。

R君はカヤックで行くよと言っているが、荷物満載のカヤックを1人で運ぶのがしんどかったので、200メートルくらい離れた沖まで泳ぐことにした。距離的にもパパッと行けるだろうと思っていたが、今思えばめんどくさいに負けてめんどくさいことをしていた。カヤックの方が泳ぐより断然早いので、僕も最初から荷物を出してカヤックで行けば良かった。

 

魚突き組に遅れて到着した僕は前日に無くして魚を獲る道具は持っていないので獲ってる人を見るしかなかった。ただ見ていても飽きるので、いい波が立っている場所で泳いでボディーサーフィン的な遊びをして楽しんでいたら

あっという間に日も落ちかけている。時刻は19時半を指していて、海に行く前にAさんから「あまり遅くなるな」と忠告を受けていたので僕らは大急ぎで帰り始めた。

カヤックで来てなかった僕はR君ののていたカヤックのデッキにうつ伏せで乗せてもらってすごく不自然な形で帰った。帰り途中R君が漕いでくれているののせめてもの手伝いになればと僕は手で漕いでみたらかなりスピードが出たので、R君は僕が手を止めるたびに「ターボやってターボやって!」と子供の様に言っていた。手で漕ぎ始めるとキャッキャと喜び最後なんかは「ターボターボ」と語彙力も失っていたので、さすがに童心に帰り過ぎだと思う。

 

もう浜についた頃は20時近くなり日も沈み空は薄暗くなっていた。

急いで食事の準備に取り掛かったが、僕らが食事の準備ができる頃にはAさんはもう食べ終わり、薪に火をつけていた。

僕らは飯を食べ終わるとすぐに焚き火を囲んでいる輪に遅れて入りミーティングが始まった。H君の午後のリーダーとしてのダメ出しやここが良かったなどの反省会もひと段落して、Aさんは夕方海に行っていたメンバーが遅く帰って来たことに淡々と怒り始めた。ミーティングが終わった後にR君は僕がカヤックで来なかったせいで怒られたと言っていた。僕としてはそもそも僕がカヤックで来ていても帰った時間に大した差はなく他のメンバーも先に浜についていたが、怒られていたので、どっちにしろ怒られていた。なんなら携帯忘れなければ後1時間くらいは時間にゆとりがあったのであんなに焦って海に入ることもなかったではないかと思う。この旅のMVPやらかし王のRだけには言われたくなかった。マジでムカついた。注意を受けたことに対してどうすれば良かったのかではなく、アイツのせいだ!とRは短絡的な考えでいるから何度もカメラや携帯を壊したり、無くしているのだと思う。同じ過ちを繰り返さない為にどうするかが話の重要な所だからだ。こんな所でガッツリ愚痴っている奴が友達だったら僕は仲良くしたくない。

 

焚き火を囲んで皆でワイワイ喋っているとお酒も進んで、気がつくとまた1人また1人と消えていった。

最終的には僕とAさんだけになり、普段あまり2人で話すことがないので、色々とAさんについて聞けた良い時間になった。

少ししてAさんもテントの中に消えて行った。天気もいいので、僕は焚き火の横にマットを敷いて眠ることにした。星が綺麗な夜であった。

最終日の朝は蒸し暑さで起こされた。時刻は6時、焚き火も灰をかぶりもう昨日の夜は終わった事を告げている。

食事を暖めたかったので、灰の底からまだ熱を帯びている炭を搔き出してそこに細い枝を加えてフゥーと息をかけてあげるとまた小さく火が起きる。鍋を温められる位に火が安定したら昨日の晩飯を熱して朝ごはんにした。

 

キャンプ中の食事では、基本は常温で長期保存が効く物が必須項目になってくる。乾類や缶詰、レトルトなんかが定番だ。車でキャンプをしにいくだけならそんなこと考えなくていいが、南国でカヤックキャンプをする時は保冷はどんだけ頑張っても2日持てば最高だ。最近ではフリーズドライも充実していて具材もしっかりしているので野菜や肉がキャンプ地で食べれるのは嬉しい。ただ、おかず1つが安くても200円はするのと量が少なめなので飯を多く食べる人は足りないので値が張ってしまう。僕もよく飯を食べるので自分で作った方が安く済む。それに試行錯誤して作るのが楽しい。

僕はパスタを作ることが多い。カヤック中は飲み水も限られているので、パスタを煮ながらそこにスープの素と缶詰を足して茹で汁をソースにして食べることが多い。

詳しく紹介すると長くなってしまうので食事はまた別で詳しく紹介しようと思う。

 

僕らは3日目の朝を迎えて体が慣れて来たのか、皆朝起きるのが早くなっていて、予定の30分前にはミーティングをしていた。Aさんの指名でその日はR君をリーダーに出発をした。

今日の予定としては昨日来たルートを通りながら、途中にある水道を超えて僕らは出発元の島に帰り1日目の出発場所とは別の浜で上陸する予定になっていた。距離的には12~3キロ程度。休憩も入れれば3時間程度で目的地に到着できる予定となる。途中通る水道とは水が集中して動く所を指している。周りの潮の流れがそこに集まるので、流れが強くなる。ただ、場所や条件によってかなり差があるので、一概には何とも言えないが、ここの水道は流れに対して漕ぎ続けても全く進まなかったという噂を聞いたこともある。僕は今までそんな時に出くわしたことがないのでわからないが。今回は横断で通った距離も1.5キロ程度の短い距離だ。

ミーティングも終わり、朝9時頃に出発してからはR君はこまめにみんなの様子を見ながら要所要所で休憩を挟んでくれた。おかげでこの3日間で一番まとまって行動することができた。水道を目の前にして一度集まってから横断をし始めた。横断自体は30分もかからないで渡れるほどあっという間で特に流されることも無く問題もなかった。そこからはリーフ内の穏やかな中を最短の直線で進んでいた。その日は南風で島の北側を岸沿いに漕いでいる僕たちは島側から吹いてくる風を左側から受けていたが、特別強い風ではなかったので影響もそこまでなかったが、Aさん曰く強くも無いが風も吹いていたのでもう少し岸沿いを漕いでもよかったと言っていた。朝の浜を出てから3時間ほどで目的の浜に着くことができた。

浜についてからはみんなで奴隷のように30~40キロはあるであろうカヤックを2人で運んで駐車場近くまで持ってくると、ミーティングを最後に行った。

2泊3日の感想を1人1人口にするのを聞いていて、僕は今回のワークショップを振り返っていた。9人という大人数でカヤックで旅をする機会はカヤック人口の少ない日本の中ではとても珍しい事だ。今回、なかなかできない体験になった。

1人でカヤックを漕ぐのは自分の体力や今までの経験と不安や好奇心が混ざった気持ちをベースにルートを決めるが、大人数だとそこが1人1人一致しないのでグループで漕ぐことを意識しないといけないのが全く違う所だ。

カヤックを始めた時にはコミュニティも無いのであまり周りにカヤックをやりたい人がいないので乗り気じゃ無くても1人で漕いでいた時も多かった。ただその時間のおかげで経験も上がって人に声をかけてもらえて最近は楽しくなっている

今回まだカヤックを始めたばかりの人も何人かいたのでそんな人と話しているとやはり最初の頃の我武者羅にやっている熱量のような物が最近は自分からかなり減っていることに気づいた。人と漕ぐのは楽しい。ただ人とツーリングしているとカヤックに集中できない。1人で黙々と漕ぎ続ける時間は正直言って楽しく無い。ただ自分で漕いでる時間は経験をあげるには1番いい時間になっていた。今回はその初心も思い出せもいい時間であった。

アウトドアガイドの夏休み

1日目

 

沖縄の緊急事態宣言が発表されて仕事が無いので、最近は遊び呆けてる。

今年はとても暑い。梅雨も五月末だというのにもう終わってしまったんじゃ無いかと思うほど雨が降らない。山に入っても常にジメッとしているはずの土もパサパサの砂になってしまっていた。

3月末には過去最高気温を記録したらしい。

今年は段階を踏んで気温が暑くならずに、いきなりフルスロットルで夏が来たので夏バテがひどく島の人たちも体調を崩している人が多い。

僕も数日前までは食欲がなくなっていた。

空模様も夏真っ盛りで日差しが痛いくらい刺してくる。

こんな時は思いっきり外に出て、この気候に慣れるしか無いと思い数日野外で過ごしていた。

野営中は人の手が入っていない国内では珍しい地域が島内にあるのでそこに行っていた。

今回はその記録にしようと思う。

ただ、そこに行くまでの道中が大変であった。

初日の朝、一緒に行くナス君の家でみんな集合した。

今回は僕も含め3人の1泊2日で行く。メンバーはこんな感じだ。

 

ナス君 (僕が20歳の頃から付き合いのあるガイドの先輩、道草屋というツアーショップのオーナーをしている。面倒見のいいお兄さんという感じの7つ上の先輩兼友達。)

堀井君 (若くして出版社から図鑑の製作依頼が来ている生き物や植物のエキスパート、実家が動物園という珍しい家庭環境に育つ。小さい頃は怒られるとワニの水槽に投げ込まれてたらしい。カンガルーの中では最大になると言われる                                                ア    アカカンガルーとタイマンで戦った経験あり。ぼくの2歳上のお兄さん)

ぼく  (ガイド6年目の25歳。カヤックが大好き。なんならそれしか知らない。趣味は料理や映画鑑賞や漫画鑑賞。お酒が好きで記憶が飛びやすい。湿度100%というブログを掲載中)

 

予定より10分早くナス君の家に行くともう2人はそろっていた。ホリイ君は意気込んで元気がみなぎっていた。相反してナス君はテンションが低くて聞くと二日酔いらしい。そんな飲んで無いそうだが、夏バテは体調を崩しやすいので辛そうだ。

ナス君の車に荷物を載せて、台車にカヤックを載せてみんな準備バッチリ!それでは早速出発地まで移動し始めた。

車の中ではホリイ君が最近知り合いになった人が、持っているカヤックがナス君の欲しかったカヤックと一緒で乗ってないなら譲ってもらえないかなという話題で盛り上がっていた。

途中からカヤックの持ち主が廃村になった所に3年ほど住んでいたという話に変わって、さっきまで盛り上がっていた雰囲気が少し沈んだ感じがした。

僕らが住んでいる島は昔は最低でも3~4は集落が多かった。それが近代化が進みライフラインの近くの集落に合併して消えたり、人口減少で自然と消滅していった。マラリアや食糧不足、災害も関係していたりして暗い過去もあったりするみたいだ。

持ち主が住んでいた集落はまだ跡がはっきり残っているそうで、お墓なんかも残っている。廃村になったのも住みやすい集落に合併したそうだと聞くが、やっぱり人がいた所では住んでいた人たちの記憶なのか、不可解な事が起こるみたいだ。

夜中、その廃村をまわるとおばぁが徘徊していたり、急に声をかけられたりするそうな。僕はさっきまでカヤックの話で盛り上がっていたトーンでホリイ君が話すその話が声色と内容が一致して無い感じがしてどんな話なのかわからず「それは怖い話ですか?」と聞いたら無言でホリイ君が鳥肌を見せてきたので理解した。『浜で急に声をかけられても絶対に振り返ってはいけないよ。』と真面目な顔で言うホリイ君がなんか怖くなってぼくもゾワゾワと鳥肌が立ってきていた。

普段、勢いのある攻めの姿勢のホリイ君がオバケが怖いと知ってそのギャップが面白くてすぐ鳥肌も収まったが、今回の旅は行ったことのないルートから島の反対側を攻めると言うルート上の新しい開拓をメインに置いていたがそれと一緒にキャンプ予定地から近くの集落跡を探索するのも1つの目標になっていたので、どこか拭えない悪寒が僕の中でずっと残っていた。

そんな話をしているうちに僕らは出発地に到着した。

荷物やカヤックを下ろしながら、みんな最後忘れ物がないか確認していたら、僕は飲み水のボトルを1つ車の中に忘れたことに気がついた。

ナス君とホリイ君にいじられて、やっちまった~と思いながら、すぐそこの売店で買えば済む話なのでそれくらいでよかったと胸をなでおろした。

売店で水買ってくるので、何か欲しいものありますか?」と2人に聞くと

ナス君はポカリ2本買って欲しいそうで、ホリイ君は特にいらないそうだ。

売店に入り、ナス君のポカリを買って、自分の水も買ってみんなのところに戻ると、ナス君はライフジャケットを忘れていた。

自分より大きなものを忘れた人がいて僕は内心ガッツポーズをしていた。彼こそ今回の旅のMr.forgetこと忘れ物大臣である。

出発地のすぐ近くがナス君の元々働いていたツアーショップなので、そこから借りてくると言う事で、笑い話で話も済んだ。

荷物も詰め終わって、時刻は10時、僕らはカヤックに乗って出発した。

 

今回はカヤックで川の上がれる所まで向かい、そこからは徒歩で山を越えて、島の反対側の海岸線に降り、目的地の浜まで岸伝いに移動して拠点となる浜まで向かう予定だ。

ホリイ君曰く出発地から続いている崖沿いの一箇所に食虫植物の苔がびっしり生えているところがあるそうなので寄り道がてらみんなで探した。

僕もその苔は川の上流で岩に生えているのを見た事があるが、海沿いの塩っ気があるところに生えているのか不思議であった。本当にあるのかと探していると、崖のくぼみに真水がチョロチョロと流れている場所が何箇所かありそこには苔が濃く生えている。苔をたどりながらカヤックを漕いでいると噂通りびっしり食虫植物が生えているところがあった。

赤く中心にかけて放射線状に伸びている見た目のその苔はケツの穴に似ていることからコウモンセンゴケと言われているらしい。というのは嘘で見た目は肛門っぽいけど本当の名前はコモウセンゴケ。僕らはカヤックを降りてしばらく写真をとっていた。

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写真も撮り終わって、満足した僕らは川の河口目指して進み始めた。時刻は10時半

漕ぎ出して少しすると向かい風が強く吹き始めていた。風は10メートル位は吹いてそうだった。

この時期は例年より早いが梅雨明けの強い南風が吹く日が続いていた。天気は濃い青空に刺すように強い日差しと重く漂っている雲のせいで、空が近く見えて夏真っ盛りの空模様である。

1時間ほど漕ぎ、普段より時間が時間がかかりながら川に入れた僕らは、風から逃げるために支流の中に入って一旦休憩をとった。時刻は11時半

支流の中は二股に別れていて、ナス君曰く一周して反対から帰ってこれるようなので、左側に入って右川の川から出てこようとカヤックで行ってみたが倒木に邪魔されて途中までしかいけなかった。

しょうがないのでマングローブにかこまれた浅瀬でエナジードリンクを飲んでのんびりと過ごした。その後来た川を戻って右側の川を行ける所まで行ってみる事にした。

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そんなことをしていたら、支流で時間を取りすぎて本流に戻り目的のポイントを目指し始めた頃には12時半ごろになっていた。ちょっと休憩するつもりだったけど1時間くらい支流を楽しんでいた。

また強く吹く向かい風の中を50分ほど進むとカヤックで上がれる終点まで到着した。

なんやかんやで出発してからカヤックの目的地までは3時間くらいとなかなかの時間がかかってしまって、時刻は13時半近くになっていた。

野営地の近くにある、集落跡地に行けるかは時間的にかなり怪しくなっていた。

 

カヤックを流されないように川辺から森の中まで上げて、置いてく荷物と持って行く荷物を分けて次の山登りに備えた。小休憩をとって軽く昼飯を食べた。

出発前はナス君がゴープロを回しながら意気込身をそれぞれ映像に残して張り切りながら14時前に山を登り始めた。山登りといってもとにかく獣道のような急坂を登るのでハイキングのようなものでなくて、場所によっては四つん這いで登るキツイの一言に限る坂であった。

あんなに威勢が良かった3人は全員が汗が噴き出してヒーヒー言いながら登っている。大学生がさっきまでイキっていたような変わりようだ。

それでも一気に20分くらい登ると他の道との合流地点に着き、そこからは山の反対側に降りるだけなので標高も100m位の山道であった。

下り道はそれぞれがまたイキリながら、ホリイ君にインリンオブジョイトイのような形の木があると場所を教えてもらったり、茂みから吠えて威嚇してきたイノシシに威嚇返しするナス君が見れたり僕は冗談をいう余裕まであった。一気にみんな元気になってワイワイとしながら山を降って島の裏側に出るのが楽しみで仕方なかった。

40分ほど歩くと下り道も終わりに差し掛かり、僕らは藪の中をかき分けながら先に進む。いきなり開けた視界には人の背を軽くこす岩がゴロゴロと無造作に並び、それに打ち砕かれてできた白波。空よりも濃い青の海がどこまでも広がっていた。岩が並ぶ海岸線沿いの先には今回キャンプ地の予定をしている浜も見える。

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時刻は15時前、目の前の景色に興奮しながら、山を越えて島の反対側に来た事を実感し始めた。また休憩を挟み、僕とナス君は写真を撮って、ホリイ君は自前のドローンを飛ばしていた。

前にホリイ君がドローンを飛ばしたのを見た時は、木の近くスレスレを飛ばしていたら見事にクラッシュしてプロペラやパーツが吹っ飛んでいたがそれを見ながら本人は、「ドローンは責めなきゃダメですよ!」と言い切っていたのを覚えている。今回もホリイ君の攻めの姿勢が見れるかと楽しみになった。

海面ギリギリを飛ばしているのを見てぼくはヒヤヒヤしたけどさすが攻める男。波の立つポイントに低空で近づきリーフ沿いの波に突っ込んだ。飲まれた!と思ったが、スレスレで急回避、高度を上げて見事避けた。

一拍ズレたらドローンは海底に沈んで行くところだったが、ホリイ君はギリギリを楽しんでいるようで流石攻める男であった。

僕らが森を抜けて出た所は逆三角の形をした湾の端に当たるポイントだ。今回キャンプ地にしようと思っている所は湾の一番奥に当たる三角形の先端の部分だ。浜沿いは砂浜の上に巨大な岩が積み上がっており平坦な所は見当たらない。

大潮で水位が大きく下がる日であれば、干潟になったリーフの平らな所を歩いて楽々進めるのだが今回は小潮で水位もそんなに下がらないので、岩を超えながら進んでいかないといけない。

おまけに五月なのに日差しが強いせいで僕らの進む先は悪路であった。

15時ごろの日差しは殺人的だ。

沖縄の畑仕事をしている昔の人たちは昼間の日差しが辛いので、早朝と夕方だけ畑に出ていたと聞いたこともある。その位炎天下の中に居続けるのはキツイことなのだ。

最近の人たちは昼間でも働いているのでタフな人が多いと思うが、僕は畑仕事をしたら絶対ぶっ倒れる気がする。

 

そんな中歩き始めた僕たち。最初は目的地も見えているので、テンションも上がって足取りも力強く大きな岩を登っては降りてを繰り返しながら進んで行くが、15分位経ったあたりから熱が体にこもっているのがわかってからが辛かった。

今卵を体に落とせば温泉卵位にはなると思う。そのくらい体が熱かった。暑さで頭も回らないのに足元は歩きづらいので、なかなか堪える。

だんだん楽しいよりキツイが自分の中では大きくなってしまって、ただ辛いだけになってきた。帰りたいしダルい。内心、自分が2人より体力が無いのかなと少し心配になっていた。

歩き始めて30分くらいした時に目の前に大きな岩壁が立ちはだかり僕らはどうしようかと立ち尽くした。

かなり前に2度通ったことがあるが、山側から回り込んで行けた気がするとナス君に伝えて荷物を置いて見に行こうと話になった。

ただキツくてとりあえず休みたいね。とみんな意見が一致したので、どこで休むかと思っていたら岩と岩の間にちょうどいい日陰を見つけたので、僕たちはそこに荷物を置いて一目散に海に飛び込んだ!

体にこもっていた熱が一気に冷めるのがわかる。もう気持ち良すぎて誰も海から出れなくなってしまった。

またこの後同じ灼熱の悪路を歩くのかと思うと考えたくない。ホリイ君が「途中帰りたかったね」って言っていたので同じ事思っていたなとホッと胸をなでおろした。

なんでホッとしたかというと僕だけ夏バテみたいになっていたらこの後の道のりはただの荷物になってしまうし、ガイドとしても自己管理が出来てないなんて恥ずかしすぎるからだ。

海から出れずに40分くらい休んだ。歩いているよりも休んでいる時間が長くなってしまった。

この休憩で僕達は少し希望が出ていた。僕らが休憩していたポイントは山から海岸線に出た時に大体目的の浜までの3/1あたりなのを見ていたからであった。

もう少し時間がかかるかと思っていたので、かなり気持ちが楽になった。

クールダウンできたので僕らは先に向かう事にした。前に迂回したルートも通れて大きな岩壁も迂回することが出来た。

しばらく歩いていたが、40分くらい歩くとバテてしまって、また20分ほど岩陰に隠れて休んだ。

3人で話していると、今年は雨が降らなくて途中にある沢も枯れてしまったかも知れないという話になった。渇水も不安だったので水は1泊2日分も入れてある。

ただ、真水が浴びれるだけでとても気持ちがいいのだ。それを道中楽しみにしていたので少しがっかりした。

その後も、もちろん歩くが足取りが少し不安定になった気がする。体もだるくかなり疲れていた。そしたらホリイ君が急に『沢ありましたよ!」と大声を出してくれて僕らもホリイ君のみている方向を見ると

崖の上から沢がチョロチョロと出ているのが見えた。

僕らは一気に元気になって沢を目指してそして満足いくまで浴び続けた。とにかくオアシスとはこの事かと思うほどの気持ち良さで僕らは無心で浴び続けた。

水量も風に吹かれてなびく程でシャワーを浴びるより少ないがその時は十分であった。

時刻も5時を過ぎて今日集落跡地を探すのは絶望的になっていた。目的地まではもう少しなのもわかっていたので、よっしゃ頑張ろう!とみんなで元気を出しながらまた沢を後にして歩き始めると、目的地が目の前だった。

「おお!」と声が上がり元気が出て来た。まだ距離があると思っていたので、かなり気が緩んだ。

ただ、目的地前に一箇所腰まで海に入りながら歩く場所があり、先に行った2人は途中でヌメッた岩で足を取られてツルツルと踊るようにカメラなどの大事な機材が入ったバックを頭に乗せて死守していたのを見てぼくはめちゃゆっくり安全そうな所を歩けた。前の2人の犠牲のおかげだ。

目的地の浜に入って足取りも軽いが砂に足が埋れてそれがまた疲れた足腰に負荷をかけて疲れる。少し進むとナス君が「あ!」と大きな声を出して指を向けてる!ぼくとホリイ君はその方向を見ると、そこには1.5mはある大きなアオウミガメが浜に打ち上げられていた。死んでしまったのだろうか。それぞれ写真を撮っていたらホリイ君が動いたと言うので、よーく見てるとヒレがピクピクと動いてる。

恐る恐るホリイ君がカメを軽くこずくと、さっきまで死にそうだったカメが急に動き出して海に帰り始めた。ただ、10メートルくらい進むと急に動きが止まって静かになってしまった。

みんなで「弱ってたしダメだったかー」なんて話をしていたら、いきなり同じ大きさのカメが現れて弱っているカメに乗っかった!僕らもそれでわかった。今繁殖期で交尾中だったんだと。あれ弱ってるんじゃなくてヤリ疲れだと。

腰くらいの水深で後尾が始まっているので、僕らもカメラを片手に水に浸かりながら写真を撮りまくった。カメも更に1匹増えてメスを取り合っているようだった。更に1匹増えて3対1の交尾になった。

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カメも1.5mくらいあると顔もデカイ。大型犬と同じくらいのサイズはあった。「あんな口でもし噛まれたら怖いですね」とホリイ君に言ったら「足取れるだろうね」と返って来たので、刺激でもしてしまったら怖いなと思いぼくは2メートル位は距離を開けていた。ホリイ君はぼくの質問に答えながらズンズン近ずいて30センチ位の距離まで近付くので僕もナス君も「ホリイ君凄いな」としか言えなかった。

さすが図鑑を出している先生で動物を前にすると顔つきが変わった。躊躇なく攻めまくりだ。ぼくとナス君は敬意を込めてホリゴロー先生と呼ぶ事に決まった。動物博士でムツゴローが出たのと実家もホリゴロー王国みたいな感じでしょと言うテキトーな理由だがいいアダ名が出来てよかった。

カメ達も徐々に遠ざかってしまい僕らも岸に上がり残りの距離を歩ききった。

野営地ポイントに着くとみんなバックを投げ捨てて力尽きたように腰を砂の上におろした。みんな歓喜の声をあげる余裕もなくただ燃え尽きたように疲れていた。カヤックに乗っていたのが何日か前のような気がするほど、

海岸線を歩くのは果てしなく長く感じられた。

浜に着いた頃にはもう18時を過ぎていて、海岸線だけで休憩も入れて3時間以上かかってしまった。これは大変だと言うことで帰りは朝一で陽の柔らかい時間に帰ることにした。

集落跡地はもう行く時間もないのでみんな諦めた。

ビールとかでお祝いをしてすぐ飲みたかったが、それより水が飲みたかった。そんなタイミングでとホリイ君が粉のポカリを出してくれて1リットルの水に溶かして3人で回して飲んだ。

するとかなり体が楽になった。すごいぞポカリ!ありがとうホリイ君!

ポカリパワーでみんなそれぞれ寝床の準備をして焚き火の薪を集めた。19時も過ぎて薪に火を付けてひと段落した。1日の最後。ピンク色の空を見ながらビールの蓋を開けた。

気がつくとナス君が素っ裸になっていた。本人曰く股擦れが痛くてズボンが履けないらしい、後は人も俺らしかいないから服着る必要もなくね。との事であった。全裸なのはほとんど後者の理由だと思うが、この夜は焚き火に照らされたナス君がこっちを向くたびにリトルナスもこっちを向いてくるので、どっちに話しかければいいのか正直わからなかった。

20時近くなっても僕らのいる島はまだ薄明るい。5月の梅雨時期になると羽アリが日暮れごろの1時間だけ尋常じゃないくらい湧いて出てくる日がある。丁度この日も羽アリが飛び始めて、しかも焚き火の明かりにつられて集まって来た。

次々に火にめがけて飛び込んで行く羽アリ。薪を足してさらに火を上げて、僕らは焚き火から離れてみた。そしたら光に集まる羽アリから逃げられるかと思ったが、どこに行っても体について払っても払っても新しいのが付いてくる。

もう耐えられなくて僕らはビールを片手に海に逃げ込んだ。流石に水辺には羽アリも寄ってこないのでしばらく肩まで浸かりながら羽アリが落ち着くまで過ごすことにした。

波に揺られながら片手にビールを持って反対の手でつまみを持って陸に行きたいけど行けないもどかしさと、暗い中海に浸かってビールを飲んでいる事が新鮮で段々と面白くなってきた。

3人で話していた時に「明日帰るのもったいないね」と話になった。集落跡地に行けても無い事もあり今回の目的には程遠い。僕とホリイ君は2連休しか取ってないので、明日散策して遊べるのは3連休のナス君だけであった。

「せっかくここまで来たのに今更中途半端に帰れるか!」とテンションが上がって僕とホリイ君は職場のボスに連絡して休みを1日延ばしてもらえるか連絡してみる事にした。1人でも帰らないといけなかったらみんなで帰ろうと話が決まった。この日は5/21日ちょうど沖縄では緊急事態宣言が発令された日の夜だった。早速連絡しようと海を出るといつのまにか羽アリもいなくなっていた。

 

すぐさまラインを一言入れて返信を待った。ホリイ君は即答で職場からokがもらえていけど僕はまだ既読もつかなかった。

気長にお酒を飲みながら返信を待った。飲みながら色んな事を話したと思うのだが、飲み過ぎてあんまり覚えていない。

気がついたら焚き火の横に引いたマットに横になっていて長かった1日が終わりを迎えた。

 

 

 

 

2日目

 

徐々に暗い空が水平線から徐々に濃紺に変わり遠くの空が白んできた。

急に目が覚めて最初に視界に入った空の色が綺麗でまだ夜が終わりかけくらいの明るさの中ウトウトしながら徐々に明るくなる景色をボ~と眺めていた。

時計を見ると5時40分。まだ起きなくていいやとグダグダしていた。

僕しか起きてないので、暇で仕方ない。2人はタープの下に眠っていてホリイ君はハンモックで、ナス君はインナーテントに眠っていた。

暇だから2人の寝てる写真を撮ってみたり、近くにカバマダラという蝶が群れていたのでその写真を撮って暇を潰した。

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思い出してラインを確認してみたけど返信はきていなかった。

7時くらいに2人も起き出してきたけど2人とも夜寒くて夜中に何度も目が覚めてしまって疲れが抜けてないらしい。

ナス君がゆっくりコーヒーを淹れてくれて、僕らはあったかい飲み物を飲みながら今日どうしょうかと話をしていたら、僕のラインに返信があった。

携帯を見るとボスから「どーぞー」とだけ返信が入ってきた。

これで1泊2日から2泊3日に急遽変更になり、今日は集落跡地をまわれる!

みんなで喜びながらちゃちゃっと朝飯を済ませた。器を洗おうと足取り軽く波打ち際に行くとまさかの昨日のアオウミガメが3メートル先くらいにいてギョっとした。

こんなに近くにいるのかと少し驚きながら、2人の元に帰った。

9時くらいには出発する予定で今の時刻は8時過ぎ、ホリイ君と少し海に入ってみようとシュノーケルを持って海に入った。

海に入って10メートルもしないくらいで1メートルは超えているカスミアジを発見!岩の下には同じくらいのバラハタもこちらを伺っていた。

人をあまり見ないからかあまり逃げないカスミアジはゆっくりと距離を取り始めて深みに移動している。

ホリイ君はテンションが上がり近くで観たい一心で、前に居る僕を押しのけてカスミアジに近づいていった。押された僕は流石ホリゴロー先生と意欲に感心してしまった。

カスミアジも行ってしまい、僕は海に入る時に持ってきていた見釣君を出した。見釣君とは20センチくらいのプラスチックで出来た小さな釣竿。海の中で魚を見ながら釣るおもちゃの様な物だ。

ホリイ君が指をさしている方向のサンゴ礁の隙間に隠れて顔だけ出しているハタがいた。顔の前に糸を垂らして餌を近づけてみると少し興味を出して餌を追いかけ始めた。

これはイケるんじゃないかと思っているとパクっとハタが食べたので一気に糸を引いて針を掛けようとしたが、針からはみ出てる餌だけを喰っていたので針は掛からず、ハタも穴に逃げてしまった。

ホリイ君と僕は海から顔を出してケタケタと笑いながらお互いに見釣君の可能性に声をあげて興奮していた。

今回魚突きが趣味のホリイ君はモリをカヤックに乗せて持ってきたが、歩きでは長モノは荷物になるので断念していた。

僕らは海から上がりナス君に見釣君の興奮を伝えながら午後からはどうにか魚を3匹は取ろうと盛り上がった。

もともとが1泊2日予定だったので食料はそんなに持って来ていなかった。米など主食はあるので今日獲物を獲らないと晩飯がかなり貧相になってしまう。なので獲物を手に入れるのも今日の日課の1つになっていた。

 

時刻も9時を迎えて各々途中の昼飯、集落跡地近くで水を採るためのボトル、カメラを持って昨日きた海岸線とは反対側の海沿いを歩き始めた。

今日の目的は集落跡を見つけることだ。更に1泊延長したので食料と昨日暑過ぎて想像以上に消費してしまった水も汲みに行かないといけなかった。

なので今日の予定としては、午前中は集落跡地、後はその先に普段は滝があるのでそこで水を汲みに行く。午後は魚を獲って食料確保をする予定だ。問題は渇水で滝があるかがわからないということだ。あるかどうかは祈るしかない。

無ければ、昨日の沢まで歩いていかないといけない。それは最悪であった。

どれだけ遅くても15時には戻ってこようと決めて時間を見ながら歩いた。キャンプ地の浜を中心に末広がりに海岸線が広がり両端に岬が見える。海の方向を向いて左が昨日山を越えて降りた岬、右が普段は水が流れている滝があり少し奥が岬になている。

僕らは海を挟んで対岸に見える海岸線を見ながらだいたい自分たちの来てる距離を見ていた。

やっぱり大きな岩が転がっているので、大した距離でないのに時間と体力がかかる。昨日と違うのは午後の強い日差しではなく、まだ日差しがそこまで照りつけてこないのにかなり救われた。

歩き出して30分程度でキャンプ地を出て2つ目のビーチについた。ビーチから山側に少し開けている所があり、誰かが目印に漂流物で目印を作ってくれていた。

山を見ていても、ここのビーチの近くだけクバの木がたくさん生えていて森の色が少し変わっているので目立っていた。沖縄ではクバは日除けの傘や団扇など生活に身近な植物なので、それが沢山生えている所には人の営みがあったかのかもしれないと言う訳で僕らは目印の所から山側に入ってみる事にした。山の中は普段沢になっている様で水の流れた跡があり、それをたどって近くに集落跡がないか探してみた。10分ほど進むと途中からは藪が濃くなり進みづらくなってしまったため、キャンパーが水を汲む為のポイントだっただけかと次の入り口を探しに来た道を引き返した。浜の近くまで降るとナス君が酒ビンを見つけた。しかもただの酒ビンでなくて、古い酒ビンであったのでそこから酒ビンを中心に沢跡を少し逸れてみる事にした。少し進むだけで更に酒ビンがいくつか転がっていた。

これは当たりかもしれないと、奥に進んでいくと土に半分埋もれた石垣が出て来た。古い素焼きの植木鉢なんかも落ちていたが、もうほとんど集落跡は朽ちてしまっていた。

ここは1910年代には人が他所に出て行ってしまった集落なので、もう110年も前の跡地だ。こんな植物の成長も早く、台風なんかもモロで喰らう海の近くでは逆によく残っていた方なのかもしれない。

ある程度みて石垣は何箇所かあったが、それ以上は何も見ることはできなかった。

山に入って1時間ほどで浜に戻って来た。

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思っていたよりも集落跡は見れず肩透かしを食らった感じであった。ナス君は出発前に「集落跡を見つけたら復興しようぜ!俺公民館長やるわ!」と声高らかに宣言していたのに建物ひとつ見当たらなかったので

少し悲しそうな顔をしている。僕は「スーパーの店長になります!」ホリイ君は「ガソリンスタンド作りますよ!」とナス君に乗っかって言っていたけど集落の長が匙を投げてしまっては僕らの夢もそこで途絶えてしまった。

結局、今日の目標の1つ集落跡地散策は終わり、次の目標の水汲みに向かった。

道中、山側に大きく森が開けた場所があったが、暑過ぎて早く水を汲んで帰りたいのでここはまたの機会にという事になった。

砂浜に足を取られて岩を超え途中で休憩も挟みながら1時間ほど歩いて滝のポイントが目の前に出て来た。岩肌が見えるがまだ滝が見えない。ヒヤヒヤしながら進んでみると普段滝が流れているだろう苔が死んで変色した岩肌が見え始めた。一歩ずつが答えに近づくほどに重い一歩になって行く。早く確認したい僕は先頭を歩いていたナス君を追い越して先に見に行った。

いくつか岩を超えると、隅っこに水が流れているのが分かった。喜びより安堵して安心した。2人に伝えようと後ろを振り返ると「沢あったか?」とナス君が聞いてきた。「ありました!」と口を開こうとしたが、僕が伝えるのと直接見てもらうのだと、どちらの方が喜びが大きいか気になってしまって、無言のままずっとナス君の顔を凝視していた。

僕が黙っているのを見て察したのか、「あったらしいよ!」とナス君がホリイ君に伝え2人は喜んでいた。ナス君は何も言ってないのになんんで分かったんだろうか?と喜ぶ2人を見ながら僕は沢があった事を素直に喜べなかった。

とりあえず、残り少ないボトルの水を補う為にバックを降ろして急足で沢の元に向かった。

普段水が溜まっているであろう所はもう干上がってしまっているので、ちょろちょろと水が流れている所に頭を突っ込んでピャー!!と叫びながらみんな気持ち良さそうに水浴びを楽しんだ。ボトルにも水を入れる為にフタを開いて、降り注ぐ水をボトルに貯めて気づいた、「あれ、水黄色くない?」一番乗りで水を組んでいる僕がボトルを覗いたまま固まっているのを見て2人は「どうした?」と聞いたので、「水が黄色いです」と伝えると「大丈夫!飲めるよ」

と勝手なことを言ってくる。恐る恐るボトルに口をつけて一口飲んでみたが、臭さとかは特になく飲むのは問題なさそうであった。

ただそれ以上飲まない僕を2人はキャッキャ笑いながらビビリ扱いするのであった。

僕の次にホリイ君が水を汲んで一言「思ってたより黄色いね。」と言うので(ほら見たことか)と僕は内心この人は飲まないだろう。さっき煽ってきたのでビビりの称号をこの人に擦りつけてやろうと思っていた。

なんでホリイ君が水を飲まないと分かったかと言うと、今回の旅の少し前ホリイ君は40度近い熱を出して1週間ほどダウンしていた。僕らが住む島の真水にはレプトスピラなる熱病のウイルスがいる。これはネズミなどを媒介にしていて糞尿が川の水に混ざりその水が粘膜から体内に入って発症する。

ホリイ君は少し前に淀んだ水辺に入ってしまってそれが原因で発症したらしい。僕は経験がないけど、体験者から聞くとインフルエンザよりきついらしい。

そんなキツイことを体験したばかりのホリイ君には十分にトラウマが芽生えている。渇水で水も淀んでいて更に変色していたら不安でもう飲めない。この勝負、僕の勝ちだ。と思った瞬間。

「ダシャー!!」と大声をあげてホリイ君がボトルの水を口から溢れさせながら、すごい勢いで飲み始めた。しかもおかわりもしていた。最低でも1リットルはいっていたと思う。

飲みきった後に「レプトがなんぼのもんじゃーい!!かかって来いやー!」と大声でこの間苦しめられた病原菌に喧嘩を売っている漢を見て僕は心の中で白旗を上げてしまった。

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水汲みも一通り終わり、時刻も12時を少し過ぎていた。一旦お昼にしようかと言うことになり各々昼食をとった。

僕は1泊2日の食材とおつまみしか持って来てなかったので、パウチの炭火焼鳥を食べた。全然足りなかったが、僕より足りてなかった男がいたのに僕は気づかなかった。

 

昼食も済ませたので、先に進むことにした。

僕らがいる水辺の近くに岬があるのでそこまで行ってみようと話になった。

バックは帰り取るのでカメラだけ持って僕らは岬に向かった。

出発してからものの15分くらいで、岬には到着して僕らは各々写真をとった。

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30分ほどたってある程度満足できたので、帰ろうかとしていた時にナス君が岩場の隙間に傘貝がいるのを発見した。

しかも普段見てる倍くらいのサイズがある。傘貝は平べったくて岩に張り付いている。危険を感じると吸盤で更に強く張り付いてしまって、道具がないと獲るのが難しい。

特に使えそうな道具はないので、ナス君と僕は持ってた紐で岩と貝殻の隙間に紐を食い込ませて引っ張れば剥がせるかもしれないと試してみたが、強く貼りついた貝はビクともせず全然ダメだった。

そんな時、写真を撮ってたホリイ君が来たので「傘貝が沢山ありますよ!」と伝えるとホリイ君は「大きな傘貝だねー!」と嬉しそうにどうにか獲る方法無いかなとフラフラとどこかに行ってしまった。

僕は意地になって何度か紐で獲れないか試してみたが全く貝が動きそうな気配すらない。半ば諦めていた時に、ナス君とホリイ君が2人でウヒャウヒャと盛り上がってる声が聞こえた。

どうしたのかと見に行くとホリイ君が傘貝を両手に持ちながら嬉しそうに貝を剥がしている。どうやってるのか見てみると警戒して強く岩に張り付く前に石で叩いて岩から落としていた。

テンションが上がりすぎたホリイ君は生き物を前にした時のモードに入っていた。ナス君と僕は「さすがホリゴロー先生」と言いながら何か取り憑かれたようにケタケタと笑いながら乱獲無双しているホリイ君を見ていた。

みるみるうちに大きな傘貝を岩間から剥がして、今日の晩飯分くらいはあっという間にホリイ君が集めてくれた。

岬で思った以上収穫があった僕たちは野営地の浜を目指して戻った。沢で荷物を取って無心で歩いた。とにかく昼間の強い日差しでへばりながら早く帰り道を終わりにしたかった。

半分くらい進んだあたりで、潮が満ちてしまって肩くらいまで水位が来てウネリも入って歩くのが大変な所があった。それぞれバックは絶対に濡らさないように万歳をしながらバックを水面から必死に出していた。

気をつけながら波に揺られ足元を岩にとられて少し大変であったけど、超えた時の達成感は結束力が強くなった気がした。後は穴ぼこだらけの岩が並んでる所を歩いている時に火星に不時着して彷徨ってる宇宙飛行士のフリをしながら歩くと内心めちゃ楽しい事がわかった。結局1時間半くらいかけて野営地に帰って来た。時間は最初の予定どうり15時前になっていて、まだ明るい時間もたっぷりと残っているうちに帰ってこれた。

木陰でタバコをふかしながらこの後は見釣君で魚を獲るぞと意気込んでいた。昨日のウミガメも朝近くを泳いでいるのが見れたので特に繁殖期のウミガメは性欲の塊なので人が泳いでいるとメスと勘違いして後ろから乗っかられてそのまま溺死なんて事もあったらしい。それは嫌なのでなるべく3人で固まって泳ぐ事になった。

じゃあ海行こうかと言っていたら、ホリイ君が「ちょっと待って、昼飯食ってからでいい?」って言っていて。俺とナス君は「?」だった。沢で食ったのに何言ってんだこの人と思ったけど、聞いてみたらホリイ君は昼飯準備したのに

持ってくの忘れてしまったらしい。さすが忘れ物王子だ。二代目をライフジャケットを忘れたナス君が襲名したかと思っていたけど、まだまだ初代はご健在であった。

その間に傘貝が傷まないように落ちてたバケツに海水を入れて簡易の生簀を作った。死んでしまった貝が2つあったので、それは釣り餌にする事にした。

ホリイ君も飯を食い終わったので、僕らはマスクと見釣君を持って海に飛び込んだ。サンゴ礁に隠れている魚を探していると昨日見たであろう海亀が僕らの方にゆっくりと寄って来た。

普段、人を見れば遠くに行ってしまう1.5m位の大きさの海亀が自分から寄ってくると気味が悪い。この日はストーカーの様に後を付いて来られて気が散るし少し怖かった。

気にしすぎてもしょうがないので、岩場の陰にいるハタを狙って釣り針を垂らしてみた。最初は僕がやってみて失敗したら順番に渡して1つの見釣君を3人で使って遊んだ。一応ワームを釣り餌に持っていたが、やっぱり貝の方が人気がある。ワームだとそんなだけど、貝だとハタに届かせる前にだいたいベラとかに餌だけ食われてしまう。これが地味にムカつく。

一通りしてまた僕の番がきた。

ホリイ君がハタの場所を教えてくれて僕はそこに針を垂らした。リーフの際で泳いでいるのでちょうど波ができるポイントでフィンも使ってない僕たちは波のくる度に揺られて針先がうまくハタの前に降りない。

漁師網がサンゴに引っかかっていたのでそれに捕まりながらどうにか餌にハタが気づかないか何度も試していると興味を持ったハタが穴から顔を出して狙っている。後少しと思い試しているとパクッとハタが食いに来た!

でも朝はここで焦って針が掛からなかったので一拍待ってから竿を思いっきり上げると釣り糸はピンと張ってハタが暴れ始めた。針が掛かったのだ。

男3人でシュノーケルをくわえたまま「おお!!」とみんな歓喜でなにか喋っているが聞き取りづらい。

僕も糸を巻き上げて見事初見釣が決まった瞬間であった。

すぐに首を折って締めたいところだが、魚獲りをほとんどやってない僕はモタついて手の中で魚が滑ってしまってうまくいかない。見兼ねたホリイ君が代わりにエラを抜いて血抜きだけしてくれた。

魚捕ったのはいいいけど誰もメバリの様な釣れた魚を入れておく様な物を持っていなかった。なので僕は少しの間手に握って持っていたが邪魔なので、水着のポケットに入れようと少し手の力を緩めた瞬間にハタはスルッと抜けて岩の奥まで泳いで行ってしまった。2人が「ええ!」と言う顔をしたのを今でも覚えている。僕も流石に死んだと思っていたので「ええ!」しか逃げた瞬間は感想がそれしか出てこなかった。

まさかまだ生きていたとは。ただエラを抜いてしまって長くは持たないので申し訳ない事をした。

その後、僕は魚3匹を目標に掲げて必死に魚釣りに集中していた。気がつくとホリイ君もナス君もいなくなっていた。

顔を上げて周りを見渡すと浜で2人は休んでいる様だ。見釣君も1つしかないので、泳ぐのも満足したのだろうと思いその後も1人で見釣っていた。

突然海亀が目の前に来てギョッとしたり。1.3m位のホワイトチップがさっきのハタの血の匂いにつられてか泳いでいたりと、やっぱり人が入っていない海は生き物が豊富で普段浅瀬ではあまり見かける事のないサイズの魚たちが沢山いて感動ものだった。ただ1つ気になったのはゴミの多さだ。ちょうど季節風が強く吹き続けるこの時期は風が吹き付けるビーチに大量にゴミが溜まる。今回野営地にしたビーチはまさにゴミが満載となっているポイントで、ビーチから海の中まで、ビニールペットボトルやプラスチックが日本や近隣の国から流れ着いていた。サイズもピンキリでドラム缶も有れば砂つぶの様に細かいプラスチックもある。更に細かいのは目に見えないだけで沢山あるのだろう。

そんな所で泳げばもちろん口に入った海水と共に僕の体にも入っている。ここで生活する魚にも入っているしそれを食べれば尚更だ。人が住んでいない日本でも数少ない地域も汚れてしまっているなら、人の影響を受けていない物なんて自然の中にはあり得ないなと思った。オーガニックが好きで純粋無垢で毒されてない物が食べたいならイメージと真逆だけど完璧に管理された水槽の中で過ごした魚の方が要望に見合ってるはずだ。

なににも毒されていない純粋無垢で体にとても健康なイメージのそれは自然の中では成立しなくて僕らの手の中でしか作り出せない。変な話だ。

沖縄にはヒッピーやスピリチュアルで健康志向な人が多くいる。そんな人たちの中でも価値観を押し付けてくる人が中にはいて「ケミカルなものが入ったものを食べない」とか「ヴィーガンだから動物性を関与したものは食べない」とか

人の飯にケチを言ってくる人もいる。そんな人に限って海藻や魚を獲って食って「体が軽い」「エネルギーが漲る」と自然の物は正義みたいな事を言っているが、病は気からとは正にこの事だと思う。だから偏ったヒッピーみたいな人のそういう部分はあまり信用できないと僕は思ってしまう。

そんな事を考えながら、見釣をしているとホリイ君とナス君が帰って来た。見ると2人ともお手製で見釣君を持っているペットボトルやウレタンに釣り糸を巻いて針をつけて簡易見釣君だ。

釣り糸は浜の裏にある洞窟の中に荷物を色々置いて簡易住居にしている人がいるみたいで、そこにあった釣り竿から拝借してきたそうだ。あとの仕掛けは僕のを使っている。

3人で各々格闘していると、ナスくんが1匹釣り上げた!僕の二の舞にならない様に大事そうに魚を確実に締めていた。

僕も魚を釣りたくて、ウズウズしながら獲物を探していると30センチは超えているハタを見つけた。急いで針を垂らすが周りの小魚が食べ始めてとてもウザったい。でもおかげでハタも興味を持ち始めて餌をジッと見ている。

僕が早く来いと願っているとガブッとハタが周りの小魚を蹴散らして食べた!ただその瞬間に針に気づいた様で一気に泳ぎ始めた。僕の持っているおもちゃの様な見釣君ではとても相手にならないらしく、糸が止まらない。

止めようと思った時には岩で擦れてあっけなくラインが切れてしまった。

「せっかくいいサイズだったのに」とショックを受けながら針が無くなった糸先を見ながら1人ションボリと浜に帰るのであった。

浜に上がると先にホリイ君が薪を集めて焚き火の準備をしてくれていた。時計を見ればもう18時過ぎ3時間は見釣君をして泳いでいた。なのにボウズだったのが残念で仕方なかった。

僕が上がって直ぐにナス君も海から上がって来た。まだ空は明るいが昼間の様な力強さは太陽に残っていなかった。1日の終わりが近づいてくる中僕らは焚き火に火をつけて晩飯の準備に取りかかった。

もう少しだけ、大きな薪を拾おうと浜を歩いている時に股擦れがヒリヒリと痛んでいる事に気づいた。明日も歩くので今日のうちに治しておきたかった。

そう言えば、昨日股擦れなら脱いだ方が楽だよ。とナス君が言ってたのを思い出して僕も裸族の仲間入りしようかと思いズボンに手を掛けたが、自分の奥の方にいる微かな羞恥心が僕の手を止める。

暗くなってからで良いか、と思って薪を拾ってテントを振り返ると既にナス君はフルチンであった。30過ぎの男が明るいうちからチンチン出して歩いてるのを見たら、恥ずかしがってるのがアホくさくなって僕も薪を捨てて

ズボンを脱いだ。あと脱いでないのは、ホリイ君だけとなった。

僕が脱いだのを見て、すかさずナス君はホリイ君に「ホリイ!2対1なんだからお前も脱げよ」と変な所で先輩の威厳を使ってホリイ君を脱がせていた。ちょっと嫌そうにズボンを脱いでいたが、この夜1番全裸を楽しんでいたのはこの男であった。

結局、この1晩だけ裸族が誕生した。人口はたったの3人という超過疎地だが集落跡地で公民館長をやると朝は意気込んでいたナス君も全裸長になったし長になるという願望は満足できたはずだ。

ホリイ君は身長が187㎝もあるのに小顔で手足が長いので、全裸だと巨人の奇行種みたいだった。

完全男乗りな話でキャッキャとしているうちに焚き火も落ち着いて、そろそろ傘貝を食そうと僕らは浜に誰かが捨てていったであろうBBQ用の網を使って貝を焼き始めた。木には誰かの泡盛が置いてあったのでそれと持って来た醤油で

酒蒸しにして食べようとホリイ君が焼き屋のお兄さんの様にジャンジャカ焼いてくれてそれを食べた。

食べた感じは、硬めのアワビの様で味も美味しかった。

数も3人で食べて酒のアテにしていると結構腹にたまる感じで満足感もあった。それとナス君が釣った魚を焼いて持って来た残りの食料を食べてお腹いっぱい食べることができた。

ある程度酔っ払ってくると、僕は今日海の中で感じた「綺麗な海でもゴミがたくさんあるので、汚染されていない魚はいなくてみんなそれを食べてるね。」という話で偏ったヒッピーの人がよく口にするオーガニックと言う言葉が裸族の中で流行った。何を見ても食べても「オーガニックだねぇ~」「自然に感謝」と言って流行り言葉は一部の人を皮肉った遊びに変わっていった。

夜も更けて、寝る前にそれぞれ今日汲んできた水を一応煮沸消毒しておくかという事でそれぞれ鍋に水を入れて焚き火の上で水を沸かし始めた。その後もしばらく喋っていたが、焚き火も小さくなり喋り声も静かになってきた頃、ホリイ君が全く会話に入ってこないのでライトを向けてみると、ホリイ君は気持ち良さそうに砂浜の上で眠っていた。全裸なので股をおっ広げにしてチンチンも出まくっていた。警戒心と羞恥心を完全に捨てれない限りあのポーズは彼女にも見せるのは躊躇してしまうと思う。その位滅多に見れるものでは無かった。

ナス君はホリイ君の寝姿に「奇行種の巨人が倒れてる」と笑い僕もまさに進撃の巨人の一コマそのものでゲラゲラと笑いながら撮影会が始まった。

ナス君は一眼で僕はiPhoneで撮りまくった。フラッシュを焚いても全く動じないのでガッツリ熟睡していた様だ。笑い終わった僕らはまた焚き火を囲んで話していたが、ホリイ君の鍋がまだ火にかけてあったので、一応下ろしとこうかとナス君が手をかけるともう水は蒸発して一滴も残っていなかった。やっちゃったなと思ったが、もうしょうがない。あんなおっ広げている人ならしょうがないなとしか思えなかった。

少ししてホリイ君が起きたので、そろそろ片ずけて寝るかと話になっている時に僕はどうしようもなく睡魔に襲われて気がついたら眠っていたらしい。色々片付けをしてもらって申し訳なかった。

気がつくと夜中3時になっていた。みんな寝床に行った様で焚き火の近くで寝ていたのは僕だけになっていた。焚き火も灰を被りもう暖かさもなくなっていた。

僕はズボンを履いてマットを寝ていた所に直接引いてもう一度眠りについた。

 

3日目

 

キャンプに慣れてくると少し空が明るくなってきただけで、自然と目が覚める様になってくる。起き抜けは頭はボーとするが顔を洗ってスッキリするとだいぶ頭も覚める。

時刻は朝6時頃、みんな同じくらいのタイミングで起きてのんびりしていた。ホリイ君が持っていたワンタンスープを作って僕らに分けてくれた。

今日は朝から動くので熱いワンタンスープを朝飯にした。腹もたまりすぎなくてでも食っているのでこれから動くにはちょうどいい。

飯を済ませたら、後は僕らは荷物の片付けをして、7時には浜をでた。出発前に記念写真を撮って僕らは歩き出した。

この日は7時頃の陽のまだ柔らかい内に歩き出して、遅くても一気に暑くなってくる10時には山の中を歩ける様にしたい。山道は1時間ほどで終わるので、その後カヤックをに乗って出発地の港まで帰る予定であった。

予定どうり行けばお昼すぎには、遅くても夕方前には家に帰って片付けをその日の内にしたかった。

僕らの歩く海岸線は方角的に7時だとまだ陽は山に隠れて当たらない。日陰を進んでいるのだが、歩き始めて少しするとまた体が熱を蓄えているのがわかる。

とにかく陽が当たる前に岩場の続く海岸線を終わりにしておきたかった。

あまり口も開かず黙々と歩く、多分中間くらいまで来たであろう時に一度休憩をとった。

昨日汲んだ水を飲み海に入って体を冷やした。ナス君と水を分けながら飲んでいたが、もう休憩の時点で500mlもない位であった。

前に同じエリアに来た際に1度水が汲めない時があった。水も底をついて灼熱の中で脱水になりかけてキツイ思いをした時のトラウマで残り少ないボトルを見た時に内心少し焦っていた。

距離的には水の量も計算して持ってきているが、余裕がないと気持ちに響いてくる。カヤックまで戻れば置いてきた飲み水があるのでそれだけが頼りであった。

休憩も終わり後半分位の道のりを頑張ろうと喝を自分に入れて歩き始めた。少し進んで大きな岩を超えた時見えたのは、海岸線から山の道に続く入り口のポイントが見えた。

みんな拍子抜けして、さっき休憩したのは距離的に3/2位まで進んだポイントであったことに気づいて、急に足取りが軽くなった。口数も増え冗談も言いながら元気になった。

見るもの全て「この岩オーガニックじゃね」や「この岩との出会いに感謝」と言って下校中の高校生みたいなノリの会話をしていた。

そうこうしてる内にあっという間に山への入り口の前まで到着した。歩き出してからかかった時間は1時間半。来る時は3時間はかかったので、かなり早い。時刻は10時前僕らは山道に入る前に一度海に入って水を飲んだ。

水は残り300mlもないので、次に休憩はカヤックでする予定で一気に山道を登り始めた。行きで足を止めて見た景色や大きな木などに気を止めることもなく登った。

山を登っていると先頭の人が何か見つけたりしやすい。先頭のナス君は何回かイノシシを見ていた。その中でも1匹大きなイノシシがいた様で、「デケェ!あのイノシシ!!」とナス君が足を止めてイノシシを指差した。僕には一瞬黒いものが茂みの奥に消えて行く所しか見えなかったので、そんな大きかったらゴリラなんじゃないかという話になった。

ご存知の通り沖縄にゴリラはいない。むしろ大きな動物はほとんどいないがアドレナリンが出てるからか、(デカイ、黒い、動物)=でゴリラだと言っても笑える位知能指数が下がっていた。

ちなみにゴリラはみんなB型らしい。B型の血液型占いを読んだ限りでは天真爛漫なマイペースでナルシストらしい。なのでゴリラはナルシストの自己中心型が多いのであろう。そうなるとナルシストで自己中心的な人をゴリラと解釈することも出来る。ちなみにナス君もB型だ。

そんな事を言っていたら40分ほどで山の尾根を超えて下り道が出てきた。下りはとても急な道なので滑る様に降りて行った。

急が過ぎる所では順番に降りて気がつくと僕たちはカヤックの置いてある所まで10分で降りたのであった。

急いでカヤックに近寄り飲み水を爆飲みした。もう顔で飲んでる位真水を浴びて満足した。ホリイ君がくれたハイチュウが甘くて美味しくて体に染みた。

1番の難所が終わって、水問題も解決したのでもう安心しきって僕らは川の水に浸かりながら全身をリラックスさせていた。このタイミングで吸うタバコが最高にうまかった。

一通り休憩も終わったので、僕達はカヤックを川に下ろして荷物を載せてカヤックを漕ぎ始めた。予定通り昼過ぎには帰れそうなので、ラーメン食ってから帰ろうと決まり更に楽しみが出来たのでパドリングにも力が入った。

突然ナス君が、カヤックのデッキに座って漕ぎ始めて、僕も真似して乗ってみた。そしたら一気に不安定になってカヤックから落ちた。ホリイ君はそれを見てゲラゲラ笑っていたが、その後ホリイ君もやってみたら連続で2回落ちて、さらにその後も落ちていたので僕はめちゃ笑った。

その後もデッキに腰掛けたまま不安定な感じが楽しくて集中してその乗り方で漕いでいると、出発した港まで2時間ほどで帰ってきた。

港に着いたらすぐに商店で冷たいジュースを買ってみんなで乾杯をしてからがぶ飲みして、荷物を片づけてラーメン屋に向かった。

ラーメン屋ではみんなニンニク増し増しで爆食いをしてホリイ君はラーメンに大盛りチャーハンと餃子を食っていたが、もう食い切れなくなっていた。僕は一気に食べたら睡魔に襲われてラーメン屋で寝てしまうところであった。

店をを出た後は向かいのスーパーでアイスを食べて帰った。

帰りの車の中で僕らは次はどんなルートでキャンプするかを話しながら、次の旅はいつ出来るか楽しみにしながら、半分片づけにウンザリしながら旅の終わりの疲れと達成感に浸っているのだった。

 

 

 

部屋とスパイダーマンと私

 

ある日の仕事終わり、1人事務所に残って今夜寝る前に見る映画をHuluで探していた。

映画なんか家に帰ってから探せばいいのだが、あいにく僕の家にはWi-Fiがない。YouTubeとかも永遠に見続けてしまうので、携帯の通信量すら1日200メガバイトで契約している。どんなに画質を落としても動画は1時間も見れない。動画前の広告は5秒でスキップするのにそれ以上読み込んでいる灰色のバーが見えると悔しい。

そこまでするなら、Wi-Fi入れればいいじゃんと思われるかもしれないけど、動画中毒の僕としてはどうでも良い内容でもダラダラと見続けてしまうので、戒めとして家にテレビも置かないようにしている。

なので見たい動画は全て、職場のWi-Fiでダウンロードしてから家に帰っている。

 

話は逸れたが、Huluで面白そうなのを探しているが、一向に見つからない。

毎晩のようにHuluを使っていたら、映画やアニメで面白そうなものはもうほとんど見てしまったようだ。

ほかの配信サービスは使っていないので、楽しみが消えてしまった事に気づいて愕然とした。

もっと早くから気づいておくべき事態だ。こんなペースで見続けていたらあっと言う間に、面白そうな作品を見終わってしまうぞと、これからは気乗りしない作品を見る事になってしまうんだぞと!

欲望に走り続けて行った数々のイッキ見と言われる愚行が後々、僕をこんなに苦しめる事に今更気づいた。

後先を顧みず進む森林破壊。私欲のために狩られ続け消えて行った動物や植物たち。汚染される大海原や母なる大地!全て私利私欲の波に飲み込まれた悲しき犠牲たちだ。

ああ、僕も今Huluと言われる有限な大地で私欲のために作品と言われる動物たちを狩り尽くし、過ちを犯してしまったと懺悔に懺悔を重ねあまりの愚かさに救いを求めて、唯一の職場の後輩の一平に連絡した。

 

僕「もしもし一平、あのさぁーなんか面白い映画かアニメ知らない?」

平「お疲れ様です。そうですねー。意外とアベンジャーズ面白いっすよ。」

僕「オッケーありがとう!」

平「あとガンダm」

 

最後はなんか言っていたが、話を聞けたので電話を切ってしまった。

アベンジャーズはちゃんと見たことがない。さらにシリーズ物で面白ければ新しい開拓場所になる。

僕はウキウキしながら検索をかけてみた。

ところが、Huluにはアベンジャーズなる物はなかった。Huluストアと言われるさらに課金すれば観られる所にはあるみたいだが、それでは人のアカウントで映画を観てる意味がない。

惨敗だ。もう見る物はないのかと落ち込んでいると、関連に初期のスパイダーマンが出てきて僕は表紙を見て思い出した。

 

あれはまだ小学生くらいだった頃の話。

当時はターミネーター2、ジュラシックパークスターウォーズなど子供心をくすぐる映画が大好きだった。

そんな中、ハリーポッタースパイダーマンが現れたのだ。

幼き僕には刺激が強すぎた。本気で僕も12歳で魔法学校行けるんじゃないかと高校入学するまでどこか期待していた。

ところが、スパイダーマンはなんか惹かれなかった。スーパーヒーローとして命を張った見返りのヒロインも僕のタイプではなかった。

そもそも、蜘蛛に噛まれたら手から糸出ちゃうってどうなの?嫌じゃない?百歩譲って、噛まれた所から糸出るのはなんかまだ分かるけど、反対の手からも出る意味わかんなくない?

めちゃフィジカル強くなるのは羨ましいけどそれならスパイダーマンじゃなくていいよね。

幼心に魅力を感じられず、それ以来スパイダーマンは見ていなかった。

思い出に浸りながら、関連を見ているとアメイジングスパイダーマンなるネクストジェネレーションが現れていたのであった。

おお、これなら克服できるかもしれないと思って僕は早速ダウンロードをすませて、家に帰った。

 

ベッドに横たわりながら早速映画を見始めた。

主人公は少しさえない高校3年生のピーターパーカー 家の地下でメカ作りやインターネットサーフィンが趣味。

ヒロインはグウェン。ピーターと同じ高校に通う3年生。108階建の医療技術や科学技術を研究するオズコープ社、コナーズ博士率いる爬虫類の細胞研究チーム、主任研修生。

コナーズ博士、トカゲの再生能力を人にも移植できないか研究している。オズコープ社の爬虫類専門で研究をしている科学者、同じチームにグエンもいる。

 

とにかくヒロインの金の卵感がすごい。

高校出てめちゃ大手の研究機関で即戦力として働ける状況にある。しかもチームリーダーのコナーズ博士が優秀と言っているので間違いなしだ。

同い年くらいの研修生を引き連れて研究所の案内も任せられて、しっかりしている子だ。ただ、そんなに可愛くない。

 

一方、主人公のピーターパーカー

とりあえず、なんやかんやあってスパイダーマンになる。頭もいいからオズコープ社が開発したアイテムも自分1人で作れてしまう。

個人的な感想としては幼馴染のシュウヤに顔が似てた。

 

初代のストーリーと変わっていたところとしては悪役がゴブリンからトカゲ男に変わった。これを言えば勘のいい人なら、大体のストーリーがわかりそうだ。

あとはスパイダーマンの糸は直接出る形式ではなくピーター自身で作ったアイテムから出ることに変わっていた。

 

始まってすぐに思ったが、主役の登場人物の能力値がすでに凡人を超えている。

映画の説明にあった、ピーターはちょっとさえない普通の高校生。ではなかった。

途中まで見続けていると、スーパーパワーが手に入ったピーターは正体を隠すためにコスチュームを着て街に現れ始める。最初は赤いタイツだったが、改良を加えコスチュームが完成して胸にクモのマークがデカデカとついたヒーローが誕生した。

それを見て初めてスパイダーマンを見た頃の懐かしい思い出に浸っていた。

 

その頃、小学生だった僕は家で晩飯を食べ終わってテレビを見ていた。

隣で静かに晩酌をしている父親が口を開いていきなり『インド行に行ってみたいか?』と聞いてきた。行きたいと即答すると父親が笑顔で『一緒に行こうと』言っていた。

どうせ酔っ払ってる父親のことだからと間に受けてはいなかったが、1ヶ月後僕は学校を休んで飛行機に乗ってインドに向かっていた。

外国に行けるとテンションが上がっていた僕は何をしに行くのか聞くのも忘れていたほどであった。現地に着いて知ったが父親の職場の同僚がインド人と結ばれて向こうで結婚式を開くのでそれに行くけどお前も来るかと言う内容だった。

空港を出ると熱気に包まれた現地の匂いや雑多な感じが新鮮で僕はテンションがぶち上がっていた。

路上で寝ている牛や、移動手段で使う人力車なんかも衝撃で父親の仕事仲間が借りているアパートに数日お世話になることになったが、そこにはメイドのお兄さんがいて生活の面倒を見てくれた。

新しい事だらけで楽しかったのを覚えてる。

空いた日数はガンジス河でラフティングやキャンプをしてとても楽しかった。

散々、水には気をつけろと言っていた父親が着いて早々水にあたり体調を壊して、ずっと寝たきりなので他の結婚式に参加する予定の日本人の人たちに可愛がってもらって、普段あまり飲めなかったジュースやお菓子をたらふく食べさせてもらって、父親のことなんか忘れて楽しんでいた。

迎えた結婚式当日は、父親の体調もある程度回復していたので参加することになった。僕も普段着る事のないスーツを着て式に参加していた。

参加した結婚式は豪勢な家の屋上で開かれたパーティーのようだった。

家の前を像が歩き花びらが舞うパレードが行われ、参加者が絵に描いたようなインドの装飾で集まり映画の世界に紛れたみたいだった。

僕も途中で像に乗せてもらって、きゃっきゃとしていた。

式の終盤でみんな家の屋上に上がり、新郎新婦の結納が完了する予定であった。

ただ、お坊さんが遅れている様でみんな準備できているのに少し待ち時間があり灼熱の日差しの中、床に座って待っていた。

やっと到着したお坊さんも正装で登場した、皆が座っているその輪の中を悠然と歩く姿はとても目立っていた。そしてお坊さんが正装とは似つかわしくない、真っ青なリュックを背負っている。

よーく見るとそのリュックにデカデカとスパイダーマンが書いてあった。

しかも、USJのおみやげ屋さんで売っていそうな子供用の小さいリュックに全面に押し出したスパイダーマンの絵があって、絵の横にspidermenと書いてある。

書かなくてもスパイダーマンとわかりそうなのにだ。その場にいたおじいちゃんなんかは色味的に新しい神様か何かと思っただろう。

 

ヒンドゥー教の神さま達                  ↓スパイダーマン

 

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並べてみたら全然似てねえわ!

 

 

輪の中心でお坊さんは座り、傍にリュックを置いてる。スパイダーマンの絵がこっちを向いてるので、僕と父親は式の最中それが気になりずっとニヤついていた。

10年以上経った今でもインドのハイライトは像に乗ったことではなくスパイダーマン坊主に取られてしまっている。

 

気がつくと思い出に浸りすぎて、映画に全く集中していなかった。

なんかもうスパイダーマンはトカゲ男と戦っているし、一体全体見てない間に何があったんだろうか。

ダラダラとアクションシーンを見ながら、思い出に浸っていたら、またスパイダーマンの記憶が蘇ってきた。

 

それはバリに行った時の話。

夏のガイド業の最盛期も終わり、仕事の少ない冬が近づいていた。

この時期はみんな数ヶ月単位で休みを取って、仕事をしに本州に行く人や雪山や海外に行く人もいて、遊びに行く人たちはみんなウキウキしている。

その年、僕は当時の彼女が働いているツアーショップの社員旅行について行かせて貰える事になった。

社員旅行の主催者であるショップのオーナーがサーファーなので、みんなでサーフスポット巡りをして一ヶ月近くバリに滞在する予定だ。

人と海外に行くのなんか滅多にないので、僕はぶち上がった。

夜に関西空港でみんなと合流してビールを飲みながらそのまま搭乗口に向かった。

日本からバリまでは一晩くらい時間がかかるので、飛行機で面白くない映画を見ながらやる事もなく、結局酒を煽るしかなかった。

酔いも周り座席の寝づらさも忘れて僕は眠りこけた。目が覚め窓をのぞいた時には外が明るくなり始めていた。

少しすると機内食が運ばれてきて、僕はそれとビールを頼んだ。

グラスがあけば、次はワインをまた煽っていたら、急にキモチ悪くなってしまって残りのフライトは修行のような時間を過ごしていた。

飛行機を降りバリ島に足をつけたときのテンションはクソ下がっていた。

僕の住んでいる南の島も、冬がくればそれなりに寒くなる。荷物を受け取って空港を出たときの蒸し暑さは終わったはずの夏がぶり返してきたような気持ちにしてくれた。

普段、仕事が忙しく遊べない夏に思う存分”はしゃげる”と思うと気持ち悪さを忘れてバリ滞在が楽しみになって来た。

はじめに、これから1月近くお世話になる宿に向かった。その道中、車線を無視して無秩序に走る車やバイク達とムッとするアスファルトの熱気がインドに行った時を思い出させた。

ゲストハウスに到着すると支配人夫婦が出迎えてくれた。挨拶を済ますと朝食の時間を教えてもらって鍵をもらい部屋に案内してもらった。

部屋に荷物を置いて、早速近くの通りを周りに向かった。

路地裏ではそこら中からタバコとクローブの甘い香りとが混ざった匂いが漂い本当に東南アジアに来たんだと思わせる。

初日の夕飯は社員旅行のメンバーで飯を食いに行きがてら翌日の予定が発表された。

とりあえずバイクを借りて、自分のボードを手に入れて波のいいポイントを回ろうという事になった。

バイクは宿の人が準備してくれるのですぐに手に入った。

サーフボードはオーナーが知り合いのサーフショップに連れて行ってくれて、ちょうどシェイプ中の一本があったので、それが完成したら買う事にした。

サーフボードが手に入ってからは脇に乗せてバイクで走り回った。朝起きてから夕方まで遊びまくった。

水が合わなくて2回食中毒になったが、それより遊びたくて仕方がなかった。

ある日、船をチャーターして少し離れたスポットでサーフィンしようという事になり、朝食を済ませると船長のいるところに向かった。

てっきり店に行くもんだと思っていたが、ついたのはビーチ近くの広場で、浜にはずらりと小舟が並び木陰の下で船の持ち主たちがのんびりしている。

すぐ船を出せて値段の安い人を探してうろついていると、オーナーがこの人で行こうと1人を連れてきた。

まさに島の人間と思わせる、色黒い肌で力士のような筋肉と脂肪をつけた骨太な男である。ザックリ言うとワンピースの黒ひげみたいだ。

団扇をだるそうに扇ぎながらうっすらと汗をかいたそのオヤジは身にまとっている白いシャツが似合っていた。

シャツはボタンが全部開いていて、ビール腹が出ているのがまた似合う。みぞおちを中心に大きな刺青が入っていて見るとスパイダーマンであった。

こんな体の中心に入れる刺青がスパイダーマンで良かったのか気になる。センスも問いたかったけど、その人のおかげで波乗りも楽しめた。

やっぱり5年くらい前の旅行のハイライトはキャプテンスパイダーマンが強く残っている。あとは野生の猿の群れに囲まれた時、猿のボス対人間のオーナーの攻防戦で、履いてたサンダルを手に持ち替え、それを振り上げた姿勢で牽制し野生の猿を追い払った出来事がランクインしている。

ゴキブリも猿も退治出来るサンダルの可能性を垣間見た瞬間であった。

 

 

こんなダラダラと思い出してしまうと隠れスパイダーマンが出てくるまでが長すぎた。

あっという間に映画も進んでいて、もうスパイダーマンもボロボロで最後の戦いになっていた。

もう正直、ストーリーもそんな見てないし、だいたい流れも想像つくしいいかなと思って適当に見ていたらスパイダーマンが勝った。ヒロインのパパ死んだ。トカゲ男人間戻った。

そんくらいの感想しか出てこないいい。ああ、なんかオチがないとこんなに引っ張ったのに終われない。あああどうしよう。スパイダーマン助けて。

どうしよう。どうしよう。

スパイダーマンの思い出を絡めて書けば面白いかもと思ったけど、大失敗だ

今の所シッパイダーマンとかつまらない事しか思いつかない。

ああああああああああああ

どうしよどうしよどうしよ

とりあえず 

おっぱい!!

 

犬とオヤジと悪魔宗教

 

沖縄本島カヤックで1周していた時の話。

時刻も夕方近くになり、人の来なそうな砂浜を見つけ、そこで一晩を過ごす事にしてカヤックで上陸した。

天気も良く7月の蒸し暑い夜はなるべく風を通したいのでフライシートはつけずフルメッシュのテントで眠っていた。

どのくらい寝てたのか、夢と現実の間でボヤ~と遠くの意識が徐々に近づいてきて、体は寝ている状態だが意識だけ目が覚め始めた。

顔の近くでハァハァと吐息が聞こえる。寝起きでボーとしながら音が気になり、ゆっくり目を開けて見ると、メッシュ生地を挟んで白い犬が僕の顔を覗き込んでいる。なんだ犬かぁ。と半ば夢見心地で犬の顔を覗き込んでみた。犬と目があった、その瞬間、犬のテンションが一気に跳ね上がって地面を掘る動きでテントの生地を破ろうと前足で引っ掻き始めたのだ!

まだ買ったばかりのテントで普段から傷がつかないように自分でも気を使っているのに、「コイツ!!」と頭にきたので犬に向かって大声を出しながらテントの内側から押し返しても何度も掘ろうとしてくるので、どうにかして追い払おうとテントの外に出ようとした時、『おい!!』と声がして犬がピタっと止まった。

クルリと方向を向けて犬が走っていく先には立派なビール腹が出たオヤジがいた。

それを見て「いるなら早く止めろよ」と思いながら寝起きが悪く、しかも一発目から頭にくる事をされ、ブスッとした雰囲気を出しながら伸びをして目を覚ましていた。

時計を見ると5時半を少しすぎた辺り、まだ薄暗く1日の始まりのバタバタに、いきなり疲れたなと思いながら、テントから出てタバコを吸っていた。

チラリとオヤジを見るとオヤジもこっちを見ていた、軽く会釈をして、荷物をまとめようとテントの中に入ると、さっきの犬がまた目の前に現れて嬉しそうにハァハァとこっちを見ていた。

またかよと嫌な気がしたが案の定、さっきと同じ所をバリバリと掘り始めて「やめろ!!」と犬の事を押しながらさっきのオヤジを探すと何故かそれを見ていた。

内心びっくりしたが、オヤジの方を見ながら「止めて!止めて!」と言うとまた「おい!」とオヤジが呼ぶと犬がピタッと止まる。犬を見るとオヤジの方に向かおうとくるっと方向転換するその一瞬、犬のおデコに何かマークが濃い赤で描かれているのが一瞬見えた。

その時、僕はなんのマークか気になってしまった反面、さっきから変わったオヤジと思っていた上に飼い犬のおでこに謎のマークを描いちゃうなんて変な人なんじゃないかなって、オヤジを少し警戒していた。

すると、オヤジは僕に話しかけてきて、こっちは刺激しないようにどうにかその場を乗り切ろうとしていたが、オヤジは初対面の僕に突然自分の生い立ちを話し始めた。

いきなりだなと、ビックリしてる僕をよそにオヤジの話は止まらず、僕も驚いているのと、イヌのマークが気になってしまって、8割以上は話が入ってこなかった。チラチラ、イヌの方を見ても額がちょうど見えなくて、もどかしさと刺激しないようにとで悶々としていた。

犬は走ってドンドン遠くに行ってしまい「頼む!クソ犬と思ってゴメン」と内心思いながら祈ったが全く願いは届かなかった。おじさんと2人きりになってしまって少し緊張気味に生い立ちの話を聞いているとオヤジはこの辺りが出身で小さい頃からこの浜辺で過ごしていたらしい、学生時代は学校が終わると友達と浜辺に集まって、タコや魚を獲って食べ、誰かが家から盗んできた酒を飲みながら毎日を過ごしていたそうだ。今ではイヌの散歩で毎朝来ているらしい。

僕はふらっと一泊しただけの浜だったけど、このオヤジにとっては昔から過ごしている浜辺であった。昔からそこにいる人の話を聞くだけで、自分の今いる所が何か近いものに感じた。

オヤジに対して構えていた力が少し抜けたが、まだイヌの事が気になっていて安心はできていなかった。

話に間ができたので、イヌのことを聞いてみた。名前はゴンタ、まだ若い、オスであった。名前が分かったので呼んでみる。クルリと振り向き、めちゃめちゃ嬉しそうにこっちに走って来るゴンタ。僕もついにマークがわかるので嬉しかった。

待ちどうしい瞬間が近づいて来るので、早くとにかく早くマークが見たい!近づいて来るゴンタのマークしか見ていなかった。赤いマークが徐々に一歩、一歩と近づいてきて、はっきりマークが見えた!

え、え、どういうことですか?これなんの意味があるのかと驚きながらおじさんに聞いてみた。

「これ、郵便局のマークですよね・・・?」 そうだよと当たり前に言うオヤジ。

郵便局員の飼ってる犬だから宣伝で貼っている、もっと世の中に郵便局を広めないといけない」

なんですかそれって、郵便局を宣伝する必要あるっけ?

拍子抜けしたのと、予想を軽々と超えてきたので、緊張が解けてどっと疲れた。

気がつくと6時半も過ぎて、オヤジもそろそろ仕事の時間だったそうなので別れ際に、何かあったら連絡してくれと電話番号を教えてくれた。

初対面の僕のことを気遣ってくれて優しい変わった人と人懐っこい犬だったなと思いながら、僕も海に出る準備をしようと思って、テントの中に入って荷物をまとめていたら、テントに穴が空いているのに気づいた。

「あのクソ犬!」とイライラしながらテントの穴を直すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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